寝れない。

寝返りを繰り返し、携帯のディスプレイに目をやるとまだ午前2時だった。

部活で疲れている筈なのに、何故か寝付けない


自主練にしろサスケの散歩にしろ、まだ早い。かと言ってすぐに寝付けるわけでもないし…と、少し外の空気を吸おうと思い雷門中指定のジャージを羽織り、外へ出た


やはり夜中は寒く、ドアを開けると冷たい風が俺の頬を掠めた。


こんな時間に出歩くなんて、なんだか少し緊張する。いつもは賑わっている河川敷にも当然誰も居ない。


「ん?」


浜野先輩行きつけの釣り堀に、誰かがフェンスを跨いで入って行くのが見えた。


ま、まさか…泥棒?


だけど好奇心は恐ろしい。つられるように釣り堀に近づき、隠れて様子を伺うと、その人はなんだか長い棒を持って歩いていった。



「っ、あの」

「えっ?うわぁ、びっくりした!私怪しい者じゃないよ!!」



驚いた。泥棒かと思いきや、その人はごく普通の女の人だった。



「何やってるんですか?」

「ん?あぁ、魚が卵を産みつけてるんだよ。なんか心配でさ」



話を聞くと、どうやらこの釣り堀は女の人のお祖父さんと二人で経営しているらしい。普段は夜しか来ないらしく…どうりで会わないわけだ。

俺もよく来るんです、と言ったらありがとうと笑ってくださった。なんだろう、胸がどきどきする



「あなた、名前は?」

「あ、松風天馬です!」

「天馬ね!私は名字名前!」

「はい、よろしくお願いします!」



海面を照らすスティックライトの明かりの元に少し大きめの魚が立ち止まっていた。



「あ、それ雷門中のジャージ?」

「はい!知ってるんですか?」

「うん。だって私、雷門中の生徒だし」

「えーっ!?」


新事実発覚。なんだかとても大人っぽく見えたから、高校生ぐらいかと思った…


「あ、私そろそろ行かなきゃ。」

「っあ…そうですか…」

「そうだ、お近づきのしるしに…はい!」


手渡されたのは、名前さんのイメージカラーのようなピンクのイルカのストラップ。



「うわぁ!ありがとうございます!」

「いえいえ。それじゃあ天馬、また学校で会おうね!」

「はい!」




その日の朝、名前さんから貰ったストラップをカバンに着けて朝練に参加した



「ん?おーい天馬!それ、どこでゲットした?」

「あ、浜野先輩!これ貰ったんですよ」

「へぇ…そういや名前も同じの持ってたな」

「えっ!名前さんの事知ってるんですか!?」

「知ってるも何も俺ら親戚だし。ちゅーか、あんたら知り合いだったんだ?」

「やっほー海士!」

「お、噂をすれば」


俺の後ろに居たのは、紛れもなく名前さんだった。明るい所で見るとより一層可愛くて驚いた。



「天馬!サッカー部だったんだ」

「は、はい!あの…名前さん!」

「ん、どうしたの?」


言うしかない。


「おっ、俺と…交際を前提に、友達になってください!」

「「え?」」


名前さんと浜野先輩がハモった。けど俺はそんな事言ってられない。夜中もずっと名前さんの事しか頭に無くて、あのストラップを握り締めて寝たぐらいだ。


好きなんだ、名前さんが。



顔を上げられずにいると、名前さんに頭をわしゃわしゃと撫でられた


「名前さん…?」

「私は簡単には釣り上げられないよ?」

「!は、はい…!!頑張ります!」

「あららー。ちゅーか、トントン拍子で進んじゃったね!」




俺は決めた


このピンクのイルカのストラップと共に頑張ろうと。



「じゃ、じゃあ名前さん!今日、部活無いので一緒に帰りませんか?」

「うん!いいよ」



俺が、ちゃんと告白できる程成長するまで待っててください。



名前さんが好きです


そう伝えるから

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