※発情期天馬




「はぁ、遅くなっちゃった…。」


今日は茜ちゃんも葵ちゃんも用事で、
更に親友の水鳥ちゃんは学校を休んでいた為、
一人でマネージャーの仕事をしていたので遅くなってしまった。

みんな手伝うって言ってくれたけど、そこまで迷惑かけれないし。



もう誰も居ない校舎を抜けてサッカー棟に入る。

当然サッカー棟にも誰も居なかった。


早く用意して帰ろう。そう思いながら
部室を開けようとしたその時、


『…!っ…!』


「……え?」


中から聞こえた音に、全身から血の気が引きスゥッと軽くなったような感覚に陥った。


何かが、いる。


まさか……泥棒?


ドアノブを握っていた手が震える。


バレないように確認してみよう、

ゆっくりと、音を出さずに
部室のドアを開けた。


そこにはよく知る人物が居た。



「名前先輩…っ、ん…はぁ…」

「て…天馬?」


そこには可愛い後輩、天馬の姿。
こちらに背を向けながらソファに座りなにやらもそもそと動いている。


ホッとしたので名前を呼ぼうとした時



「ぁ…っ、やんっ!せんぱ…っはぁ、名前先輩、あぁぁっ!!」


普段の様子からは想像できないような位の、女の子のような高い声を出した天馬は、先程とは打って変わってぐったりとしている。


「天馬?…どこか痛いの?」


私が声をかけると天馬はビクッと身体を揺らし私のほうを見た。
かなり驚いた表情をしている。

「名前先輩…今の、見てました…?」

「すごく大きな声だったけど…どこか怪我したの?」


私の名前を呼んでたし…と続けながら近付くと天馬は慌ててズボンを整え、着ているユニフォームのシャツまでズボンの中に入れてしまった。
ふとソファを見ると天馬がいつも学校に持ってきている青いタオルが。


「あ…そのタオル洗っとこうか?」

「いいいいいいです!!自分で洗います!!」

「そ、そう….」


天馬の気迫に負け、帰る準備をしていると

先輩、と小さな声で名前を呼ばれたような気がした。


「先輩…っ、俺…もう我慢できません!!」

「えっ?うわっ!!」

後ろから抱き締められた後、
くるりと向きを変えられ天馬と目が合ったかと思うと急に押し倒された。


「ちょ、天馬!?」

「俺…名前先輩の事が本気で好きなんです!!
今日だって先輩のこと考えてたら…なんかおかしくなっちゃって…。」

「えっ?ちょっ、ちょっと待って!!やだ!!!」


私の制止など全くきかず、天馬は私の首元に顔を埋めている。


「先輩…やっぱり年下は嫌ですか?子供ですか?俺には…名前先輩を守れませんか?」


ふい、と顔あげて私を見る天馬はいつもの天馬とは違い、泣きそうな顔で私を見る。


「天馬、落ち着いて。」

「落ち着いてなんていられません!こんなに好きなのに…なんで名前先輩は分かってくれないんですか!?」

「…私も好きだよ!天馬が…雷門に入学した時から!!」



え、え?と天馬がパニックになってる間に隙を見計らい起き上がった。


「はぁ…天馬も、男の子なんだね。」

「すいません…先輩…。」


怒られた犬のようにしょぼんとする天馬が可愛くて、



「ふふ、…おいで、天馬」


「名前先輩?」


天馬がのそのそと近づいて来る


ぎゅう


「わわっ!?」


さっきの強引な天馬とは大違いの反応に思わず吹き出しそうになってしまった。


「ねぇ、もっかい…言って?」



私がそう言うと、顔を赤くしながら


「名前先輩が…大好きです!!」




返事はもちろん


「私も大好き。これからよろしくお願いします!」



羊の顔したあの子は、狼のような一面を持っていました。

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