今日も天馬は葵と一緒に居る
まったく、ふたりで何話してんだか。あんたの彼女は私でしょうよ
そんな光景を見せ付けられて、当然私の心の中は穏やかじゃない
こうなったら、幼馴染の輝くんにも協力してもらおう
「ねぇねぇ輝くん、ちょっとお願いがあるんだけど…」
「名前ちゃん。どうしたの?」
「あのね、さっきの英語の授業で分からない所があって…」
「うん!僕で良かったら」
にこにこと笑う輝くん。彼は本当に良い子で純粋だから、天馬について相談した事は一度も無い
「ありがとう!えっとね、ここなんだけど…」
「あ、ここ難しいよね。ここはね、be動詞を…」
「あ、できた!ありがと、輝くん。」
「うん!」
チラッと天馬を見ると、天馬はじっとこっちを見つめていた。うんうん、いい感じ。
さらに追い打ちを掛けるように、私は気付かれないようにわざと輝くんの消しゴムを落とした。
「あ、ごめん」
「大丈夫だよ」
輝くんの消しゴムを拾うタイミングを見計らい、私も消しゴムに手を伸ばすと、お互いの指先がトン、と触れた。
「あっ、」
「わ、ごめんね!」
輝くんの顔がどんどん赤くなっていく。
すると怖い顔をした天馬がずんずんと歩いて来た
「名前…ちょっと話があるんだけど…」
「ん?わかった。じゃあ、ありがとう!輝くん!」
「う、うん!」
天馬に着いていくと、人気のない倉庫前に連れて来られた。
「…名前、どういうつもりなの?」
「え、何が?」
「とぼけないでよ!」
「…もしかして、輝くんの事?」
「どうしておれの目の前であんな事…!!」
自分の事を棚に上げて私ばかり怒る天馬に少しムッときた。
「なら、言わせてもらうけど天馬と葵だって同じじゃない!」
「うっ…」
「仲良いもんね、私なんかより葵のほうがお似合いだよ。」
「そ、それは…」
しゅん、と天馬の眉毛が下がって行く。少し可哀想だけど、私だって常日頃あんた達の異常なほどの仲良しにもやもやしてたんだよ
「私…輝くんの事、好きかも。」
「そ、そんな…」
「もう別れよう?」
「絶対やだ!!」
突然、天馬に抱き締められた。言い過ぎたかな、そう思ったけど私は少しSっ気があるようで。
んふ、もうちょっといじめてみよう
はぁ、とわざとらしく溜息をついてみると、天馬はビクッと身体を揺らし私を抱き締める力を強めた
「…名前、おれの事嫌いになった?」
「どうだと思う?」
「うぅ…ごめんね…」
「嘘だよ。大好き」
「え?」
馬鹿だな、私が天馬の事嫌いになるはずないのに。ぎゅうっと抱き締め返し、ふわふわした髪の毛を撫でてあげると、私の首元に擦り寄ってきた。
「名前、好き」
「うん。私も」
「好き、大好き。」
「…うん」
「ずっと、おれの側に居てくれる?」
「もちろん。ずっと天馬の隣に居るよ。」
「よかった…!」
ホッと胸を撫で下ろしている天馬を見て、思わず私も顔が緩んだ。
「さて、と。教室戻ろうか!」
「おう!」
教室に帰ると、葵が私に向かって口パクでゴメンねって言ってるのが見えたので私も良いよ、って口パクで返した。
そしてまた、相変わらず葵と仲良しな天馬を見て私は嫉妬するのでしたとさ。