※高校1年生設定




中学1年生の時から一緒だったから、離れるなんて想像もつかなかった。




「おれ、さ。留学するんだ、イタリアに!」

「…え?」


いつも通りのお昼休み。
嬉しそうに笑う天馬の隣で、私は時が止まったような感覚に陥った。


「コーチの勧めでね。行ってみないか、って!」

「う、そ…」


どくどくと鼓動のリズムが速くなり、じわりと視界がぼやける。


やだやだやだやだやだやだ。


「天馬…わたし、」

「名前は、応援してくれるよね?」


行かないで、なんて。
とてもじゃないけど言えなかった。


「…うん。応援、してる」

「やったぁ!ありがとう!」



彼女なら、笑って見送るべきだよね



「…出発は、いつなの?」

「12月10日だよ!」

「そっか…見送り、行くね。」

「ありがとう!」



今日は11月17日

出発の日は、もうすぐだった。



それからは天馬を避け続けてしまった。顔を見たら絶対に泣いてしまうから。

一緒に居れるのはあともう僅かなのに。

弱い私には、最愛の彼氏の背中を押してあげる事すらできないんだ。



そして、ついにその日が来てしまった。





「っ、寒っ…」


昨日の夜から雪が降っている。


河川敷駅での待ち合わせ。15分も早く着いてしまった。


道行くカップルが羨ましかった。今からどこへ行くんだろう、ふたりで楽しくお買い物にでも行くのかな。考えれば考える程、自分達を照らし合わせてしまう。私達だって、本当は。



「名前!」


後ろから愛しい声が聞こえ、振り返る。


「天馬、おはよう。」

「おはよう!うー、寒いね!!」

「うん。…秋さんは?」

「今日は名前にだけ来て欲しかったんだ。」



まともに天馬の顔を見れない。だめだよ私。しばらく会えないのに、


俯いていると、天馬に右手をぎゅっと掴まれた。



その温かさが、また、涙を誘う。


神様、私は一体どうすれば良いのでしょう。



空港に着き、電光掲示板を見ると、イタリア行きという文字が映っていた。搭乗開始までは、あと1時間ある。



「…ちょっと、話そうか。」

「うん…。」



外に出て、少し歩くと、緑地公園が見えてきた。粉雪が降っている所為か周りには誰も居ない。



「寒くない?」

「ふふっ。寒いよ、当然」

「ごめんね!でも、名前と二人だけで話したかったから…」

「ん、そっか…。」



ベンチに座り、足元を見ると白いブーツが雪に溶け込んでいるように見えた。


「…今日で、お別れだね。」

「…うん。なんで名前は、留学を応援してくれたの?」

「んー?当然だよ。天馬がサッカーするのを、ずっと見ていたいから。」

「へへ、そっか…。」



口では何とでも言える。本当は、どこにも行って欲しくない。ずっと一緒に居たい。私は弱い人間だから、悲劇のヒロインにはなれない。



「…あのさ、我儘かもしれないけど…。おれが帰ってくるまで、待っててくれる…?」

「…うん。待ってるよ、ずっと。」



時計を見ると、搭乗開始まであと30分だった。



「…行こうか。」

「…うん。」


ああ、いよいよか。



公園を出る手前、ピタッと天馬の足が止まった。



「…しばらく…会えないから、キスしてもいい?」

「…いいよ。」



肩を掴まれ、天馬に口付けされる。身体は冷え切って寒いけど、触れた唇だけは熱くて。


抱きしめられ、抑えていた涙が溢れた。なるべく嗚咽が漏れないように、声が震えないように話す。



「…っ、本当は、行って欲しくない」

「…うん」

「遠くに、行かないで」

「…いるよ、名前の隣に。」

「手紙、書くから!」



涙を拭われた後、しばらく天馬に見つめられ、なんだか恥ずかしくてマフラーで顔を隠した。




空港に戻り、イタリア行きの飛行機の搭乗口に向かう。私が入れるのはここまで。



「じゃあ、私はここまでだから。頑張ってきてね!」

「おう!」

「…浮気したら、ぶっ飛ばすから。」

「お、おれには名前しか見えないよ!」

「…ふふ。日本から応援してる」

「ありがとう!じゃあ、行ってくるね!」



搭乗口に入って行ったものの、天馬は少し歩く度に、立ち止まりこちらを心配そうに振り返る。


心配性だな、私は平気なのに。


にこりと笑顔を作りながら手を降ると、ようやく安心したのか少し手を降り、人混みに消えていった。



行っちゃった。


平気なんて…大丈夫なんて、嘘。強がり言ってるだけだ。


送り出す時に堪えていた涙が今になって溢れてきた


「っ、う…っく…てん…ま…」


人目を気にするどころかどんどん涙が雫状になり落ちて行く。


その時、急に音楽に合わせて携帯が震えた。


携帯を開くと、天馬からのメール。

そこには、



2年後にかっこよくなって名前を迎えに行くから待ってて。



そう書かれていた。


「…ふふっ。」


嬉しいけど、高校生が書く文章じゃないな。


待ってる、とだけ送り空港から出ると、もう雪は降り止んでいた。



イタリアで輝く彼氏の希望を胸に。

涙の雫は、もう流さない。




−−−

中途半端に終わってしまったので
続きを書こうか検討中です…!

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