今日は部活が休みだから、彼氏の天馬と一緒に商店街に新しくできたケーキ屋さんに来た。
「んー、どれもおいしそう!」
「迷っちゃうね!」
散々迷った結果、私はガトーショコラ、天馬はマンゴータルトに決定!テイクアウト用に箱に入れてもらって、木枯らし荘に向かった。
「ただいまー!」
「お邪魔します!」
いつもは秋さんが返事してくれるのに、今日はシーンとしていた。天馬曰く、秋さんは夕方までお出かけらしい。
手を洗い、麦茶を用意して、お皿にケーキを乗せると何だかブルジョワな雰囲気が漂った。
「「いただきまーす!!」」
ひんやりしたチョコレートが口の中でとろけて、ふわふわのスポンジと相性が良くて…とにかくおいしい!
天馬も同じみたいで、かなり幸せそうな顔をしていた。
ケーキを頬張っていると、天馬が私のガトーショコラをキラキラした目で見つめていた
「ねぇ名前、それ一口ちょうだい!」
「良いよ!はい、あーん。」
「えっ!?」
「早くしないと私が食べちゃうよ!」
ガトーショコラの一部を自分のフォークに突き刺し、目の前まで持って行くと、天馬は観念したように恥ずかしがりながらも口を開けた。
「あ…あーん…。」
「はい!」
天馬の口にケーキを入れた瞬間、部屋のドアが開いた。
「天馬ー。誰か来てるの?あっ…」
「んぐっ!?」
「ああああ秋さん!!」
言わなくても分かるとは思いますが、私は今、天馬にケーキを食べさせてあげている状態。
つまり
見 ら れ て し ま っ た 。
「お取り込み中失礼しました…」
「秋ネエ!」
「秋さん!」
弁解するため慌てて部屋から出たものの、秋さんにはお年頃ね!って苦笑されて、たまたま通りかかった外国人の住人さんには石の上にも三年デース!と言われてしまった。どういう意味だ。
仕方ないので部屋にふたりで落ち込みながら戻って来た
「み、見られちゃったね…」
「恥ずかしい…」
「…で、でも!なんとかなるさ!」
「ん、そうだね…!」
天馬の言うとおり、なんとかなるさだよね!秋さん、きっと忘れてくれるはず…!!
さっきみたいに天馬と向かい合わせに座り、食べかけのケーキにフォークを突き刺すと、さっきの一部始終がまた浮かんで来た。本当に恥ずかしい。
でも…たまには良いよね、こういうのも。
気づくと顔が緩んでしまったみたいで元に戻らなくなった。頬に手を当て真顔になろうと試みるものの、治らない。
この顔の緩みは、おいしいケーキを食べたからなのか、若しくはさっきの騒動の所為か。
「っ、名前!恥ずかしかったけど、おれ…なんか嬉しかったな…!」
「えっ!?実は…私も。」
「ほ、本当!?」
あ。分かった。
顔が緩む原因は、ケーキより甘い、この恋の所為。