ー愛し合う二人が鉄塔でキスをすると永遠に幸せになれるー
そんな言い伝えが代々雷門中に受け継がれている。
「名前、知ってる?あの鉄塔での言い伝え。」
「うん!あそこでキスしたら幸せになれるんだよね?」
「うん!名前達、行ってみたら?」
葵の視線の先には必死にボールを追いかけている私の彼氏、天馬。
「えっ!?そ、そんな恥ずかしいよ!!」
「なんでよ。あ、もしかして…まだなの?キス。」
葵の言う通り、私達は付き合って1ヶ月経つのに…手すら繋いだ事が無い。
天馬の性格上、二人きりでもイチャイチャする事も無い。
本当は天馬、私の事好きじゃないのかな…。
「よし…それじゃあ皆、5分休憩だ!」
グラウンドに神童キャプテンの声が響いた。
天馬がこちらに手を振りながら走ってくる。
「名前ー!水ちょうだーい!!」
「…あ、はーい!どうぞ!」
私が水を手渡すと天馬は一瞬で飲み干してしまった。
「ふー、生き返った!あ、名前…ちょっと帰りに寄りたい所があるんだけど良い?」
「うん、分かった!」
ありがとう!って言いながらまたグラウンドに走って行ってしまった。
天馬の事だからスポーツショップ系だとは思うけど…。
練習後のミーティングも終わり、みんなが帰って行く中、天馬を待っていると5分ぐらいで更衣室から出てきた。
「お待たせ!よし、帰ろっか!」
「うん。ところで今日はどこに寄るの?」
「鉄塔!」
鉄塔、と聞くだけでビクッとなる。
それだけ私が意識しているって事か…。
「よし、着いたー!」
「相変わらず、綺麗だよね…ここ。」
時間が時間なので、ちらほらと電気が点いている家が多い。
「…ねぇ、名前。ここの言い伝え…知ってる?」
「う、うん…。」
驚いた。
まさか、あの天馬が恋愛の話題を出すなんて。
それだけじゃなかった。
「俺、こういうのに慣れてなくて…寂しい思いをさせてしまってるって、昨日葵に聞いたんだ…。名前…ごめんね。」
「….え、あっ…そうだったんだ…。」
「あの、名前。…もうちょっとそっちに行ってもいい?
「う、うん!」
ずずっ、と体をこちらに寄せる天馬。
一気に天馬との距離が縮まって、緊張する。
しばらく沈黙が続いたけど、
先にその沈黙を破いたのは天馬だった。
「…っ、あの…俺達も、しない?…その、えっと…。」
「…キスを?」
「あ、うん!!」
「じゃ、じゃあ…目、瞑るね。」
て、天馬とキスだなんて…
緊張して心臓がバクバクする。
「よし…行くよ。」
「うん…。」
天馬に両肩を掴まれて、
どんどん天馬の顔が近づいて来て…
ごちっ。
「痛っ!天馬のばか!痛いよ!!」
「ご、ごめん!!」
キスはキス、なんだけど…
勢い余って歯が当たってしまった。
「もう…私、初めてだったのに…。」
「うぐぐ…ごめんね、俺も初めてでよく分からなくて…。」
「えっ、そうなの?」
お互いが初めてだったのが嬉しくて、歯の痛みなんてどうでも良くなってしまった。
「あの、名前…もう一回、しても良い?」
「うん。…今度は、ゆっくりね?」
「わ、わかってるよ!…じゃあ、しっ、失礼します…。」
二回目は、天馬は私の肩じゃなく頬に手を添えて、
唇が重なった。
…。
……。
……苦しい!!
あまりにもキスしてる時間が長くて苦しいから天馬のズボンを何度か軽く引っ張ったら離れてくれた。
「ぷは、なんか嬉しくて…長めにしちゃった!」
「はぁ…はぁ…。もう!苦しかったんだから!!」
とは言ったものの。
私も、癖になっちゃいそうです。