「出て来い!魔神ペガサス!!!」




天馬の合図と共に魔神ペガサスが地響きのような唸り声で出てきた。




私もサッカーが大好きで、
憧れの雷門に入学して入部テストを受けて、晴れて合格した。



女だから…そんな理由だけで、やめとけって、みんなに言われた。



でも天馬だけは違った。



一緒にサッカーやろう!って言ってくれて



入部テストに受かってすごく嬉しかった。


天馬もこれから一緒にがんばろうって言ってくれた。




なのに、



天馬はどんどん私よりサッカーが上手くなって、化身まで出せて。



毎日部活が終わったら一緒に帰ってるけど


こんなに近くにいるのに、いつも天馬が遠くにいるような気がして。




もう、辞めようかな…サッカー。





練習もミーティングも終わり、私も着替え終わってからドアを開けるといつものように天馬が待ってくれていた。




「名前、帰ろ!」


「…うん。」



思っていたよりもかなり低い声が出て自分でも驚いた。







「でさー、さっき化身出すときね…名前?聞いてる?」



「え?あ、ごめん…。」



今日なんか変だよーって笑う天馬。



いらいらする、


天馬は悪くないのに。


こんなちっぽけな自分自身にいらいらする。




言うなら、今だ




「ねぇ、天馬…。」



「ん?どうしたの?」



「私…もうサッカー辞める!」



「えっ!?ちょ、待ってよ!名前!!」



「…っ、じゃあね!!」




天馬の制止も聞かずに走って帰る。


家に帰ってベッドに寝そべると、涙が止まらなかった。







今朝は朝練を受けずに登校した。


サッカー部のみんなは第二グラウンドで練習してたから、天馬に名前を呼ばれたけど…無視して校舎に入った。



予鈴が鳴って天馬が朝練から帰ってきて、私の席まで直行して来た。



今日はいつもみたいに笑顔じゃなくて、かなり怒った顔をしている。




「ねぇ、名前!!なんでサッカー辞めちゃうの!?俺は絶対に認めない!」



「…天馬には関係無いでしょ。」



「関係あるに決まってるよ!!なんで…そんなこと言うの?」



「もう、ほっといてよ!」




天馬は何か言い返そうとしてたけど、本鈴が鳴り先生が来たので渋々自分の席に戻って行った。





放課後。





「…ほら、名前!行くよ!」



「やだ、離して!!」





誰も居なくなった教室で天馬に引っ張られる。



「もう、いい加減にしなよ!何を怒ってるのかは知らないけど、サッカー部は辞めさせない!」



「なんで…なんで私の事ばっかり構うの!?」



「当たり前じゃないか!!大切なチームメイトを放ったらかしにはできないよ!」





ほら行くよ!!そう言って天馬は、私の腕を掴みサッカー棟へ足を進める。





力の強さに負けて、嫌々ながらも歩いていると突然、廊下でピタッと天馬の足が止まる




「…一つだけ教えて。なんで、サッカー辞めようと思ったの?」



「…。

天馬、どんどんサッカー上手くなるし、化身まで出しちゃうから…なんだか、置いて行かれたような気がして…。」



「え…?」




なんだか恥ずかしくなって俯いていると、突然天馬が吹き出した。




「俺が名前を置いて行くわけないじゃないか!」



「だ、だって…!!」



「俺達、仲間だろ?」



そう言いながらガッツポーズを作る天馬。





天馬らしい意見、というか。


なんだか悩んでいるのがバカバカしくなってきた。





「…うん、ありがとう。やっぱり私、サッカー辞めない!」



「よし、そうとなれば練習だ!行こう、名前!」




太陽みたいに笑う天馬が本当に眩しい


天馬に出会えてよかった。




「あ、後さ…あの、伝えたい事があるんだけど…」



「ん?何、天馬?」



「…やっぱり、部活終わってから言う!!」



「?分かった。」






部活も終わり、天馬の提案で河川敷に来た。




「風が気持ち良いね。」



「…。」



「…天馬!きーこーえーてーる?」



「うわぁ!ご、ごめんね。」




こほん、って咳払いしているけど、そんなに重要な話なのかな。



「あのね…
名前、俺にさっき言ったよね。
何で俺が名前を構うのか、って。」



「…うん。でもそれはチームメイトだからでしょ?」



「ち…違う!いや、まぁ…それもあるんだけど…。」




もう、はっきりしないなぁ…




「天馬!ちゃんと言ってよ!」



「うっ……。

俺、名前の事が好きなんだ!!」



「嘘…?」



「嘘なんかじゃない!俺、入学した時から名前が好きだったんだ!!」




半ばヤケクソになって叫んでる天馬

信じられない。



だって私も、




「私も、すっ…好き!!」



「本当…?ゆ、夢じゃないよね!?」



「天馬!夢じゃないよ、だって…ほら!」



天馬が可愛いすぎて、思わずほっぺを抓ってみた。



いててて…と言いながら私に抓られた所をさすっている。




「ってことは…!夢じゃないんだね!!」



「うん!」




あのさ、と天馬が一言ぽつりと漏らした。



「ちょっとだけ木枯らし荘に来てくれないかな?…秋ネエに、改めて名前のこと紹介したいんだ…!」



「えっ!秋さんに!?」




恥ずかしいよ、って言ったら大丈夫大丈夫って笑う天馬。




「秋ネエも、きっと喜んでくれるよ!」



「…うん、分かった!行こっか。」




木枯らし荘への帰り道は、なんだか景色が違って見えた。

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