――自分は何故、ここにいるのか。
いつからここにいるのか。
そもそもここはどこなのか。
自分は誰なのか。
カナデは、その名以外の全てが曖昧だった。
自分たち以外の生き物の姿のないこの森で、自分は何をしているのか、何のために存在するのか、全く判らなかった。
ただ、いつから共に居たのか定かではないソラの存在が、唯一の救いであり、生きがいになっていた。
カナデの弾いたピアノの音色を綺麗だと言い、澄んだ歌声で応えてくれるソラがそこにいる…
それだけで、心に空いた空洞が満たされるようだった。
(――ソラが居てくれるなら、僕は、僕が誰かなんて判らなくても…)
カナデはぼんやりと、穏やかな日々に身を任せていた。