――むかしむかし、あるところにそれはそれは綺麗な青の羽を持つ一族がいました。
人に似た体に、自由に大空へ羽ばたける空色の翼。
彼らは人間と長い間共に過ごし、人間が機械技術を身につけ始めたころ、世界から忽然(こつぜん)と姿を消してしまいました。

「とりかごにあおいろ、とらえたひとは」

カナデと呼ばれた青年のゆるやかな旋律に合わせて、女性は歌う。
青い鳥の歌は、誰もが知っている伝承歌だった。

「あおをもやして、はねをてに」
「てつのかたまり、てんにとどいて」
「はいいろのそらでひとり、ないたかみさまは」

――なみだであおの、こころをけした。

一つ目の区切りまで歌い終えた女性は、カナデを見て目を細める。
カナデも鍵盤からふっと指を離して、穏やかに微笑んだ。

「ソラの声は、この曲にぴったりだね」
「カナデの音が、いざなってくれてるから」
「そうかな?」
「うん、ソラはカナデの音、好き。カナデの音は、きれい」

ソラと呼ばれた女性は、大人のような、子供ような眼差しで笑みを深くする。
カナデはその表情を見て、表情を暗くした。

「僕の、音は…ソラが望むものでは…」


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