良いとこだな、この島は。

船から落っこちた時はホントにヤベーと思ったけど何とか助かったし、ここに来れたからラッキーだったな。


島のみんな優しいし、面白いやつらもたくさんいる。

中でもアイツが一番面白ぇ。
笑ったり、怒ったり、コロコロ変わる顔。スゲーしっかりしてんなーと思ったら結構ドジなとこもあるし。

見てて飽きない。

ナミの家は居心地が良くて、アイツが隣にいると楽しくて、このまま帰らなくても良いかなーなんて思ったりもする。


でも、この島に俺が住むわけにはいかないんだ。



















「…お前、ナミのことはどう思ってるんだ?」

ナミのケガを見てもらった後、診療所の中庭でボーッとしてたら、カラカラのおっちゃんがいきなりそんなことを聞いてきた。


「どうって?ナミはナミだぞ。」


俺にとってナミはナミで、たった一人しかいない。


「私はナミの幸せが一番だ。ナミのことを泣かせるヤツは誰であろうと許さん。」
「おっちゃん、ナミのこと大切なんだな。」
「当たり前だ!あの子は私の娘も同然だ。あの子を嫁に行かせるなら、私が認めたヤツ以外はダメだ。」
「ふーん。」

なんか難しいこと言っててよくわかんねぇけど、俺にくれるって言ってんのか?

「お前は、私が見る限り中々骨のある男だ。この島に住んだらどうだ?」
「…俺は、この島には住めねぇよ。」
「何故だ?」
「そりゃあ…アイツがこの島を出たがってるんだ。だから、俺が残るわけにはいかねぇ。」
「そう、思うか?」
「ああ。おっちゃんだって、気付いてんだろ?」


隣に座る顔を見ると、元々怖ぇ顔が眉をしかめて余計に怖ぇ顔になってる。


「あの子が心配で、そばに置いておきたいと思うのは…私のエゴか?」
「えご?」
「この島でみんなで守っていくことが、あの子の幸せだと思い込もうとしていた。…私も年を取ったもんだな。」
「んん、よくわかんねぇけど。」
「…あの子を、連れて行くのか?」
「連れて行きてぇけど今すぐは無理だなー。」


アイツと一緒にいたら毎日がもっと楽しくなる。
ホントは今すぐにでも連れて行きたい。


「俺、まだ高校行ってるし、寮に住んでるからなー。だから、卒業したら迎えに来る!そしたらナミのこと連れてっても良いか?」
「ふん、そんな先のことは約束出来ん。」
「何だよー。さっき、ナミのこと俺にくれるって言ったじゃねぇか。」
「ば、バカ者!!お前にやるとは一言も言っとらんぞ!」
「ええー?そうだっけか?でも良いや。連れてくって決めたしな。」
「あの子の気持ち次第だ!仮にここで私が許可したとしても、あの子が行きたくないと言えば連れて行かせん!!」
「ダメだ。俺はもう連れてくって決めたんだ。」
「こっこの…なんて自分勝手な…!」



おっちゃんも、この島のみんなも、ナミのことが大好きで。
それがわかるから、おっちゃんがムキになって怒れば怒るほど、嬉しくなる。


一発殴らせろと言われた時は参ったけど、思いっきりゲンコツした後にスゲー嬉しそうに笑ってて訳わかんねぇ。

これで連れてけなかったら、俺殴られ損じゃねーか。絶対に連れてくけど。















あれから、一年半経った。


連絡先なんか知らねぇから、アイツには何も言ってないけど、話すのは会ってからで良いか。


船が島に近付くと空気が変わるのがわかる。
懐かしい匂い。

たった一週間しかいなかったはずなのに不思議だな。



波止場に見覚えのある顔がいる。

「おーい!」と手を振ると、俺の顔を見た途端に大騒ぎをして周りのやつらを呼び集める。

どんどん島のやつらが集まってきて、船の上の俺に手を振ってきたり、笑顔で何か叫んできたり、スゲー怒った顔で文句を言ってきたりする。

相変わらず面白いやつらばっかりだな。



ナミは俺を見たら、どんな顔をするんだろう?
やっぱ、スゲー驚くかな?


でもアイツのことだから「何しに来たの?」とか言いそうだよな。



早く、早く、早く。



到着までが待ちきれない。




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