どうしても、手に入れたいものがある。











キラキラ、キラキラ。

太陽の光を反射して、昼間の海は本当に綺麗。




今日はすごくいい天気。

降り注ぐ太陽も気持ちがいいし、風も穏やか。


雲の動きを見る限り、この天候は崩れることなく後数時間は続きそう。

そう伝えたら、アイツはニコニコご機嫌な様子。


毎日見ている海を飽きもせず、嬉しそうに眺めている。



子供みたいに大はしゃぎで身を乗り出しちゃって。


「ルフィ!危ないわよー!」

私はアンタのお母さんじゃないのよ、
なんて毒づきながら。


危なっかしくて目が離せないんだから、

っていうのは言い訳で。

毎日見ているアイツを飽きもせず見つめている私。










どうしても、手に入れたいものがある。

手に入らないとわかっているからこそ、欲しいもの。






「ルフィー!聞こえてるのー?危ないってばー!」

心配してるのと、振り向いて欲しいのと、
少しの期待を込めて呼べば、




「ナミー!お前も来いよー!ここ、風が気持ちいーんだー!」


ブンブンと大袈裟に手を降って、欲しかった笑顔で応えてくれる。


本当は独り占めしたいけど、アンタはみんなの船長だから私だけのものにはできないよね。



だから、今は、

見つめてるだけでいいの。




ふいに、頬を掠める空気が変わった。

あ、来る。



危ないわよ、と伝えようと立ち上がったのと同時に下から吹き上げる突風。


「あーっ!」


ルフィの大声と一緒に空に舞い上がった麦わら帽子。

それを追って船から飛び出した背中を間一髪のところで掴まえた。



「しししっ、悪ィ悪ィ。あぶねーとこだった。」

船の縁から上半身をほとんど落っことした体勢でブラブラと不安定に揺れながら随分と呑気だこと。


「ちょっと、重いんだから…っ、自分の力で戻って、よっ…!」


こんな大海原で落っこちたりしたら泳げる人間でも溺れちゃうんだから、ましてやカナヅチなんてもってのほか。
自分が悪魔の実の能力者だってことを、もっと自覚して欲しいわ。




海に落ちかけたっていうのに反省する様子もなく、ケラケラ楽しそうに笑っている。


「危ないから、コレ持っててくれよ。」
「もうっ!大事な宝物なんでしょ?もっと大切にしなさいよ。」

差し出される麦わら帽子を受け取ろうとした私の両手が空を切る。


「だからナミに持ってて欲しいんだ。眩しいだろ?被ってろよ。」


乱暴に私の頭に麦わら帽子を乗っけると、アイツはひらりとベストを靡かせて走り出すした。タタタッと軽やかな足取りで。


「おーい!ウソップー!チョッパー!遊ぶぞー!!」





本当にずるい男。


アンタの言葉にどれだけ威力があるかわかってるの?


自覚が無いなら勘弁して欲しいわ。


私だけが特別だって勘違いしちゃうじゃない?



その向けられる笑顔はみんなのものだけど、こうやってアンタに麦わら帽子を被せてもらえるのは私だけ。


そう思ってもいいの?



「…暑い…。」



相変わらず強い日差しで照り続ける太陽から逃げるように麦わら帽子を目深に被り直して呟いた。





キラキラ、キラキラ。


眩しいのよ、アンタが。




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