監禁玩具強姦注意










今は一体何日何曜日の何時なのだろうか。知ったところでどうしようもないけれど。痛むのかそうでないのかすらわからない頭で、臨也はぼんやりとそう思った。
素肌に触れるシーツに頬を寄せ、ともすれば身も世もなく泣き崩れたくなる衝動を必死に堪える。身から出た錆だと諦められたのは、揺さぶられていた最初の数時間だけだった。
嫌いで嫌いで、いっそこの世から消えてくれればいいとさえ思っている男に強姦される日がくるなどと、臨也でなくとも夢にも思わなかったことだろう。
あの日、あのとき、池袋になど行かなければ。幾度悔やんだところで、時計の針は戻せない。けれど後悔せずにもいられない。手首に触れる金属の感触は、臨也を何度も絶望の淵に突き落とすのだ。
路地裏で好き勝手に滅茶苦茶されて気を失ってしまったあと、目が覚めたときにはもう両手から自由の二文字は奪われていた。外して、こんなのは嫌だ。我ながら可哀想になるくらい震えていた声に返されたのは、暴力のようなキスだった。

ガチャリ、ドアが開いた音が鼓膜を叩くと、条件反射で臨也の体は震え出す。奥の奥まで恐怖を刻み込まれた体を必死に縮ませてみたところで、近づいてくる足音が消えるはずもない。ぴたり、足音が臨也のすぐ傍で止まった。
「ただいま、臨也」
腰かけられたベッドが、二人分の重みにギシリと鳴く。シーツの上に蹲る臨也の髪に触れながら帰宅の挨拶をする男が、臨也は怖くてたまらない。
合わせることを拒む視線を重ねたいのか、顎に触れた手に力を込めて無理やりに角度を変えられた。首が軋んで痛い。
「おかえり、だろ?いい子にしてたか?」
サングラスの向こうにある瞳をうっすらと微笑みの形に緩めながら、臨也をこんな目に合わせている男――平和島静雄は、そう問いかけた。カチカチと歯を鳴らす臨也をうっとりと見つめ、静雄はそのくちびるに指を這わせる。怖い。怖い。静雄が怖い。
「臨也ぁ……返事はどうしたよ?ん?」
臨也の後頭部を撫でていた手が、するするとうなじに下りてくる。いたずらに触れてくる皮膚に寒気を覚えながら拳を握ると、静雄が喉の奥で笑い声を転がした。
「……っや……!」
うなじを愛撫していた手が、首筋を斜めに辿って鎖骨を二、三度往復したあと、不意に胸の尖りに触れた。ガリッと爪で引っ掻いたかと思えば、慰さめるように撫でる静雄の指。
「固くなってきたぜ?」
「い、や……やだ、もう、嫌だ……」
「嫌じゃねえだろ。イイって言えよ」
撫でたり擦ったり、執拗に刺激を与えられる。色づき、ぷくりと立ち上がったそれを愛しそうに見つめた静雄は、迷わずに顔を近づけて口に含んだ。熱く濡れた舌でちろちろと舐められる。背筋に走る悪寒と快楽に、いつも死にたくなる。
「ひっ、や、いやだ……っ!」
自分の情けない声なんて聞きたくない。でも、静雄が自分の乳首を舐める音なんかもっと聞きたくなかった。舌で転がしていない方を指で弾き、静雄は上目で臨也の顔を見つめている。
熱く濡れた瞳には、隠しきれない情欲が浮かんでいた。怖い、初めて犯されたときよりもずっと、自分の身体に飽きる様子のない静雄が怖い。
「ん……気持ちいいだろ、臨也?俺も気持ちいい。手前のその顔だけでイきそうだ」
なら、写真でも撮ればいい。そして二度と触れないで、セックスなんか強要しないでほしい。けれど、そんな願いが叶う日は当分こないだろう。もしかしたら、永遠に。静雄の執着ぶりを見ていると、いつも絶望に襲われる。
「あー……だめだ、マジたまんねえ」
「っ、あ」
両手が利かない身体を、シーツの上に押さえつけられる。ぺろりと舌でくちびるを舐め、静雄は臨也の太股に腰を押しつけた。
「ほら、もう……な?手前ん中に入りてえってよ」
「っ……ゃ……」
固くなっているものをぐりっと当てられて、吐きそうになる。布越しだというのに、そこの熱までも鮮明に思い出してしまうくらいには、臨也は静雄の身体を深くまで覚えさせられていた。
静雄は挿入しているときと同じように腰を揺らし、臨也の太股が与える刺激を楽しんでいる。この変態野郎と睨みつけると、静雄が笑った。
「いつまでも手前は生意気だよなあ……そこがいいんだけどよ。ほら、脚開け」
静雄は臨也の太股に手をかけて、易々とそこを割り開いた。秘部を舐めまわすように見つめられ、臨也は羞恥で頭がおかしくなりそうになる。
閉じようと必死になればなるほど、静雄は楽しそうに笑うだけだった。脚を限界まで開かせ、その間に顔を埋められる。性器が熱い粘膜に包まれ、臨也は望まぬ快感に全身を震わせた。
「い、や、いや、いやだ……!」
静雄の口が臨也の性器を愛でる音が、臨也の鼓膜を殴りつける。直接的な刺激を与えられたら、どうしようもない。好きでなくても、殺したくても、そこを弄られると身体が悦ぶのだ。無理矢理に火をつけられる感覚、こんなものは欲しくない。萎えていたものが段々と熱を帯びていく感覚に、臨也は嗚咽を堪えて頭を振った。
「やめ……やめ、ろ……シズちゃん……っ」
繋がれた両手を振り下ろし、静雄の頭を滅茶苦茶に殴る。無駄な抵抗とわかっていたが、そうせずにはいられなかった。静雄は臨也の両腕をどうにかしようとはせず、されるがままに殴られるだけだ。それがより一層臨也のプライドをえぐる。
静雄にとっては、自分の抵抗など取るに足らないものなのだと嫌でも思い知らされる。それこそ、ノミが顔を跳ねている程度にしか思われていないのだろう。なんて忌ま忌ましい。屈辱だ。
「、ひ」
太股の感触を楽しむように撫でさすっていた右手が、不意に臨也の臀部に触れた。やわやわと揉まれる度に、筆舌に尽くし難い嫌悪感が臨也を襲う。
男の硬いそこに触れることで性的興奮を覚えるような男がいるということを、臨也は知識だけでなく経験として叩き込まれていた。情けなく震える声は、さぞ静雄を楽しませていることだろう。悔しくてたまらなかった。
ちゅっとリップ音を残して、静雄が臨也の性器から口を離した。ほっと息を吐く臨也の顔を不躾に眺めるその目元が、どうしようもない興奮で色づいている。
男のものをくわえて、男の尻を撫でて、一体何が楽しいのかわからない。わかりたくもない。理解の及ばないことは嫌いだ。静雄も、セックスも、全部全部大嫌いだ。
逃れたい一心でシーツをずり上がろうとする身体を、静雄が片手で押さえつける。尻を撫でていた手でベッドサイドに置かれているローションを取ると、口で蓋を開け、中身を臨也の下肢に遠慮なくぶちまけた。
冷たさと気持ち悪さで息を飲んだ臨也の隙をつき、尻たぶを割り開く。拒絶の悲鳴を上げるよりも先に、静雄の長い指が臨也の後孔を貫いていた。
「い……っ……や、や、あ……」
「力入れんな。痛えのもきついのも手前だぞ」
「抜、けよ……死ねっ、死ね……!」
「そりゃあできねえ相談だぜ、臨也くんよ」
これっぽっちも開いていない心とは裏腹に、朝な夕なに望まぬ性交を強いられている身体は指を受け入れる。中のやわらかい粘膜をいじられる度に、女のような甲高い悲鳴が喉をついて飛び出た。





110210

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