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nrt先生のツイートやばすぎたですね










ガタン、ガタンガタタン、電車に揺られながら見る街は、また少し違う顔をしているものだ。この電車に乗る度に、静雄はガラでもないことを思う。眠らない街東京の中でも、よりいっそう夜の帳が降りにくいあの街へ向かう度に、いつも。
「……」
ふと顔を上げた先に、大きなお腹を抱えた女性がつり革を持って立っているのが見えた。静雄は特に何を思うこともなく席を立つ。身重の体に余計な刺激を与えないよう、できる限りの穏やかな声を喉から追い出した。
「そこ空いてます」
「え、でも……」
「俺はすぐ降りるんで」
だからどうぞ、と言うと、女性は申し訳なさそうに頭を下げた。そして、先程まで静雄が座っていた場所に腰を下ろして一息ついてから、また静雄に向かって頭を下げた。なんとなく気恥ずかしい気持ちになってから、軽い会釈を返した。
「次はー……」
ちょうど目的の駅に着いたらしいアナウンスに、少し収まっていた殺意がまた暴れ出す。ずれてもいないサングラスを押し上げてから、静雄はまだ開いていない扉を睨みつけた。







眠らない街新宿、目当ての場所を目指しつつ、静雄は道を踏みしめていた。胸糞悪い気配が色濃くなってくる。自然寄る眉をどうするつもりもない。まっすぐに向けた視線の先、夜の闇に溶けてしまいそうな、胡散臭い男がそこにいた。
「また来たんだ。借金取りってのは随分と暇なんだね」
嫌味でしかないその言葉を流しながら、静雄は男を――折原臨也を睨みつける。薄く浮かべた笑みに吐き気すら覚えながら、静雄はくわえていた煙草をぷっと吐き捨てた。
「街を汚すものじゃないよ」
「もう十分手前で薄汚れてんだろうが」
「ひどいことを言う」
「害虫を憐れむ心は持ってねえんでな」
一歩、また一歩と詰める距離、臨也は逃げない。ただ笑っている。ただ笑って、静雄の行動を見つめている。
「手前こそいっつもいっつも出迎えごくろーさん」
「君は目立つから、行動が把握しやすくて助かるよ。俺だって、君みたいな規格外の化物に部屋まで乗り込まれたくはないからねえ」
歌うように滑らかで、耳障りな声だと思う。静雄はごきりと首を鳴らした。とっくに臨戦態勢であるのはお互い様だろう。あの腕の角度、いつでもナイフを取り出せるようにしているに違いない。忌々しい男だ、早く死ねばいい。ぶっ殺す。
「ストーカーはよくないよ、シズちゃん」
「全人類のストーカーしてる手前にゃ言われたくねえな」
「おやあ?ヤキモチかい?気っ持ち悪ぃ」
「そっくりそのまま返してやるぜ……いーざーやーくんよぉおおおお!」
手近にあった標識を引き抜くと、臨也は笑ってナイフを突きつけてきた。その笑みが嫌いで嫌いで大嫌いだ。びきびき浮かぶ血管を無視したまま、静雄は標識をふりかぶる。轟音のその先に、臨也はいなかった。トン、と肩に触れた手、臨也だ。にやりと笑う顔と目が合ったのも束の間で、臨也は静雄から少し離れた場所に着地した。
「……手前、相変わらず猿だな」
「そりゃ君だろ。もの投げつけてきて鬱陶しいったらないな」
「嫌ならおとなしく死ねよ」
「ははっ……ごめんだよ、このクソ野郎」
額に浮かぶ血管の数が増えるのを感じた。臨也に向かって伸ばした手に、ナイフの刃が滑る。舌打ちしてからなおも伸ばすと、臨也はめんどくさそうに溜め息をついていた。
「君は何がしたいんだ。殺す殺すってどうせ殺せやしないくせに。君は臆病だ。意気地無し。大嫌いな俺すら殺せない弱虫な静雄くん」
そこで言葉を切った臨也が、にやりと、笑う。
「そういうところ、可愛いな。殺したくなるくらいに」
ぶわっと静雄の血液が音をたてて沸騰した。目の奥で爆発したものはなんだったのだろう。臨也を目の前にすると、いつも得体の知れない感覚に襲われる。殺意だけでないはないなにか、憎しみだけではない感情。それを知りたくて、静雄は電車に揺られるのかもしれない。少し離れたこの街の、胸糞悪い男に会うために。
「……そうかよ。なら死んでくれねえ?可愛い俺のためによ」
「君が死ねばいい。苦しんで苦しんで苦しんで、最期まで俺の名前呼びながら死んじまえ」
けらけら笑う細っこい体を、砕くつもりで片手に引き寄せた。うるさい口に噛みついて、流れた血を舌で舐める。つっぱねる腕を掴みながら、深く深くくちづけた。
「……獣が」
「手前も似たようなもんだろうが」
そうでなければここまで馬鹿みたいに執着したりするものか。貪るためのキスを繰り返しながら、静雄は標識を握る手に力を込めた。今日こそ殺してやろうという決意を新たにしながら。


20111009

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