ガチャと生徒会室の扉を開く。あーもー昼休みに呼び出しとかマジないで跡部。何か奢ってもらおなんてグダグダと考えていたもんだから、目の前に広がった光景に少なくとも驚いた。
「おまっ、何度言ったら分かるんだ!ここは違うって言ってんだろ!」
「ヒイイ会長すいませんでしたぁああ!」
あの跡部が、女子に怒鳴っている。扉の取っ手に手をかけたままポカンとした表情をしていれば、俺に気付いた跡部が「来たか忍足、まぁ座れ」と何故かある無駄に高そうなソファーへと促した。
先ほどの女子生徒へと目を向けると、何かのプリントに向かってガリガリとシャーペンを走らせている。先ほど跡部の事を会長、と呼んだ所からして生徒会役員なのだろう。そんな推測をしていると、跡部がオイと声をかけてきた。
「今日の放課後なんだが、もうすぐある部活に行けないかもしれない。そこでだ、忍足今日はお前が練習を仕切ってくれ」
「あぁ、そういう事な」
跡部の頼みを快く引き受ける。それから一言二言交わし、生徒会室を後にしようと立ち上がった。
丁度、立ち上がった時に再び先程の子が手直しをしたであろうプリントを抱えて跡部に近付いていた。
「どどどどうでしょうか」
「…………」
「……か、会長…?」
「まだ詰めが甘い所がある、が…まぁ上出来だ。良くやったな」
「! はいっ!」
そんな光景に自身の目を疑った。端から見れば微笑ましい光景だろう、だが跡部という人物を良く知る自分には信じられへんかった。
え、ていうか跡部って勝ち気な子がタイプ違ったん?ホラ、前にあったやんか…ストテニでそんな感じの不動峰の女の子からかってたやんか。明らかにその子、跡部に話しかけるとき下からやったで。真逆と言っても過言やないで?
そんな事を思いながら扉に手をかけ、再び跡部を盗み見る。褒美だと言わんばかりにくしゃりと女の子の頭を撫でる。その表情は妙に嬉しそうで、また目を疑った。
何や、跡部も中学生なんやなぁと改めて感じた忍足であった。
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