「知ってるもなにも、僕の幼なじみだよ」
軽く微笑みながら、なんでそんなこと聞くの?という表情で返される。
今の俺の心の中が曇り空でどんより、不安でぐるぐるしてるなら、柚の心はお日様でカラッと晴れているだろう。
「そうか…」
幼なじみ、という言葉に、新たな予測が次々と乱立する
例えば、小さい頃からの付き合いで、だんだん好意が涌いてきたとか
誰よりも一緒に居る時間が長かったのは俺なんだから柚は俺のだ、とか
まぁ、何にせよ子供っぽい
自己満足と独占欲の塊みたいなもんか
「汚ねぇなぁ…」
「え、僕汚い?」
きょとんとしたカオで覗き込む顔は、いつも通りの柚で、不安や心配は何もないんだなと分かる。
「違う違う。とりあえず、何かあったらすぐに言えよ」
「んー、言わなくても夕にはバレちゃうけどね」
「ダテに柚の恋人やってないからな」
「えへへ。あ、ねぇねぇ」
「ん?」
「なんで陽の事知ってるの?」
柚の質問に、少し眉間に皺が寄る。お前はあいつと何があるんだ。そんなことは、聞いてもなにも分からないって分かっているけれど
「…職場の後輩なんだよ」
「そうなの!?今度会いに行っても良い!?」
“会いたい”という言葉に、心配を通り越して恐怖を感じる
「だっ、だめだ」
「えー!なんでだよーいつか行っちゃうからー」
「だーめっ」
右手で軽くグーをつくって、コツンと頭を叩いてやる
会わせたくなんか無い
柚がどこかに行ってしまうのが、何よりも怖い
「本当に…何か隠すのはダメだからな…」
「?……うん…?」
ぎゅっと抱き締め、胸に寄せた柚を、もう一度確かめた
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