残念ながらべた惚れ
とあるドラマの撮影日。
今日、一緒に撮影するのは…
「おはようございまーす♪」
神田琉依さん…
最近、その演技力が買われ、売れてきている女優。
この役の大人な雰囲気とは裏腹に、素顔は可愛らしい女の子。
「あ、一ノ瀬さん
おはようございますっ」
「おはようございます。
今日はいつもより早いですね」
「ふふっ
今日は予定があってですね、早く来たんです!」
「予定?」
「はいっ!」
じゃあ、準備があるのでと言って別の部屋に入って行った。
走っていく姿も可愛らしい…
けど、少し寂しいのも事実。
―――――――――――………
しばらくすると、お待たせしました、と神田さんが戻ってきた。
可愛らしい仮装をして。
「一ノ瀬さん、今日は何の日か知ってますか?」
「10月31日…ハロウィンですね」
「そうっ!!だから、トリック オア トリート、です!」
両手を私の前に出す。
「飴しかありませんが、いいですか?」
「はいっ!」
私は神田さんの手に飴をのせる。
そうすると、嬉しそうに笑う。
「一ノ瀬さんは優しいですね!」
「そうですか?」
「はい!
だから、一ノ瀬さんは大好きです」
――〜〜♪
「あ…、すみません
電話、出てきますね」
私はさっさと部屋を出た。
赤くなった顔を見られる前に。
残念ながらべた惚れ
(ねぇ、トキヤ〜)
(…なんですか、音也)
(うわっ!!なんで怒ってるの!?)
(タイミングが悪いんですよ、まったく)
(知らないよー!!)
(絶対に許しません)
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間に合った…
一番人気のトキヤでハロウィン…?