――――4月

私はみんなが、これから始まる新しい生活にわくわくしながら歩いていく学園までの道のりを、一人ゆっくりと歩いていた。



「おい、お前」



すると、後ろから小さい男の子が話しかけてきた。

私が振り返るとその男の子は私の前に手を出した。



「これ、落としたぞ」


「………あ」



男の子の手の中には私の付けていたキーホルダーがあった。



「ありがと」


「おう!気をつけろよな」



男の子はそう言うと、走って行ってしまった。

元気な子…。






―――――――――――………






俺は自分のクラスへの道を歩いていた。

朝会った女の子

俺より身長が高かったけど、何故か悪い気はしなかった。

むしろ可愛いとまで思った。

また会えるといいな、なんて考えてると
俺のクラス、Sクラスの前まで来ていた。

俺は迷うことなくドアを開ける。

教室には結構たくさん人がいて、友達作りに勤しんでいる。

黒板に書いてある自分の席につこうと歩きだすと、見覚えのある姿が。



「よう!お前もこのクラスだったんだな」


「あ…朝の人」



俺の隣の席はさっきまで考えていたその女の子で、俺は少し安心した。

女の子は私物であろう本を読んでいた。

丁寧にしおりを挟むと改めてこちらを向いた。



「朝はありがとう」


「あ、いいってそういうの。あんま慣れてないからさ」


「…わかった」


「あ、まだ名前教えてなかったな。
俺は来栖翔」


「私は…桜井こはる」



この時こはるは一度も、
俺に笑顔を見せなかった。














気になるあの子、隣にいた


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