「神様って居ると思いますか」

ふいに、呟いた進の顔はとても綺麗でなんだか驚いた。
それはとても幼い頃の思い出で、まだ一緒のベッドで寝ていた頃の話だった。
思えばどちらもいろんな方向でませていて、お互いの前位でしか弱さを見せる事が出来なかったのである。
真夜中に怖くて眠れないと言ってくる進を自分の布団へと導き、手を繋いで寝ることで自分も凄く安心するのだった。
そこから他愛もないけれど二人にとっては大事な話をポツポツと交わし、どちらともなく寝るのだった。それが幸せだった。




「神様って居ると思いますか」

同じセリフを二度目に聞いたのは、シチュエーションは全く違い日も高くお互いにあまり干渉しなくなったある日の事。
それぞれが思春期を経て、幼き日の信頼なんて消えかけてしまっていた。
背中越しに感じた体温なんて無かったことになっていて、家庭内での会話なんて皆無に等しかった頃だ。
部活でチームメイトとして言葉を交わすことはあれ、私生活には既に関係は無かった。
そんな自分達が久しぶりに交わした言葉が、これである。




一度目も二度目もしっかりと答える事が出来なかった。
一度目はしっかりと悩み、二度目は考える事さえ放棄した。
けれど答えは出なかった。
進は一体どういう答えを望んで居たのか、それさえ分からなかった。
分かろうともしなかった。
自分達がすれ違ったのは時の流れか、と自分を納得させようかと思ったけれど心の何処かで納得することが出来なかった。
それは兄弟だからか。
親愛の情、そうかもしれない。
愛だ、愛の形だ。
進を愛しているから、離れられないのだ。
それが進を傷つけているとしても厭わない。

一方的な、愛だ。




そして今日三度目の日が来たのだった。

「神様って居ると思いますか」

何も言えなかった。
何も言うことが出来なかった。
目の前にいる愛した弟は、真っ白な部屋で横たわり窓の外を見ていた。
甲子園目前でトラックに轢かれた哀れな弟が。
自分はもうすぐ最後になるかもしれない試合へ望むのに、そこへ進を連れて行けないのだ。


「神様って残酷ですよね」



「兄さんみたいに」





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