ざあざあと音を立てながら、雨のように水が落ちる音がする。
 体を冷やしてはいけないからと出しっぱなしのシャワーから降り注ぐお湯は、今となっては気が狂いそうなほどの刺激となって一騎を襲う。水滴が当たり、背筋を伝う感触にすら小さな震えが止まらない。肌を叩く飛沫は幾分か冷めてはいたが、タイル張りの浴室を湯気で白く煙らせていた。
 目の前のタイルに手を付いて、一騎は今にも折れそうな足に何とか力を入れる。腰を支える手がなければ、そのまま床に座り込んでしまいそうなほど体に力が入らない。大きく息を吐き出したタイミングで一番奥まで入り込んできたものに、噛み締めた口の隙間から堪えきれなかった声が漏れた。みっともなく引き攣った呼吸音を耳が拾うのと同時に、すぐ後ろで総士が笑う気配がする。
「気付いてるか?」
「何…っ、あ」
「いつもより響いてる」
 少し意地悪な声音で囁かれた言葉に、かっと頬が焼けるように熱くなる。何が響いているのか、そんなもの考えなくてもすぐに分かってしまった。言わなくても良いことを、一騎を追い詰めるようにわざわざ報告する辺り意地が悪い。せめてもの仕返しに振り向いて睨み上げてみるが、今の総士には大した効果は無かった。それどころか楽しそうに口の端を上げ、そのまま動き始めるので思考もろともぐちゃぐちゃに混ざってしまう。
「やだっ…んあっ、あっ、あ!」
「良い声だ」
「やっ…んぅっ」
 ぐちゅぐちゅと生々しく響く水音と、耳元で聞こえる低く響く声にもう、何も考えられなくなっていく。恥ずかしいとか、怖いとか、そんな感情はどんどん小さくなっていって、その代わり大きくなるのは気持ち良くなりたい、ぐちゃぐちゃにされたいという本能的な欲求だった。
「もっと聞かせろ」
「やあっ!あっ…あんっアッ」
 唸るような低い声で絞り出された総士の声も欲で濡れて掠れていて、それが更に一騎の熱を煽る。抽送を繰り返しながら一番弱いところを強く擦られてしまえば、口から出るのは総士に甘えるような、はしたない喘ぎ声だけだった。



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