白いシーツの上に、細い体がうねる。汗が浮かんだ額に張り付いた髪の毛を指でそっと払ってやると、目を開けた一騎が総士を見た。熱に浮かされ緩んだ黄玉色の瞳が涙の膜を張って、瞬きの間に一粒零す。そうし、と、ここにいることを確かめるように呼ぶ声と共に伸ばされた手を取り、指の付け根にある痕に唇を寄せた。自由な視界と引き換えに巨大な力を封印しながらも、総士を取り戻すために、自分の身を犠牲にしてまで戦ってくれた証。総士にとってそれは狂おしいほど愛しく、一生背負うほどの罪と後悔を意識させるものだ。
 いくらか表情の緩んだ一騎を見て、今度は唇へと口付けを落とす。互いの温度を分け合うような穏やかな交わりを終えて、総士はシーツに投げ出された白い脚を抱えて開かせた。
 出来るだけ負担が少ないようにとは思っているが、正直自信は無い。一騎を傷付けるかもしれないという不安に、少しだけ迷う素振りを見せた総士に気付いたのか小さく名前を呼ばれる。ついと視線を向けた先、真っ直ぐにこちらを見る瞳はどこまでも澄んでいた。
「一騎」
「大丈夫、だ」
 お前になら何をされても大丈夫だと、伸ばされた指が左目の傷跡を撫でる。後悔などするはずが無いと、全幅の信頼を透かした表情に心が動いた。あとからあとから、愛しさが溢れて止まらなかった。
 頬を撫でる手を取り、シーツの上で繋ぐように握り込む。僅かな緊張に震えるそこに、自身の切先を宛がった。重心を傾けると、ゆっくりと狭い肉の間に飲み込まれていく。
「ふ、っん、ぐ」
 やはり辛いのか、一騎が苦しそうな声を漏らす。圧迫感に耐えながら、できるだけ時間をかけて全てを中に収めきった頃にはどちらも息を乱していた。湿った黒髪を撫でながら、確かめるように声をかける。
「痛くないか?」
「痛くな、けど、っ苦し…」
 荒い息の間に、途切れ途切れに声を絞り出す一騎の目から涙が零れた。真っ赤に上気した頬と苦しげに寄せられた眉に、今すぐに彼の全てを暴いてやりたいという欲求が湧き上がってくるが理性で捻じ伏せる。
「っ、大丈夫か…?」
「大丈夫じゃ…このままの方が、キツイ…から…」
 どうすることもできず、止まったまま声をかけることしか出来ない総士に、深く息を吸った一騎が片方の腕を首に回してくる。引き寄せられて角度が変わった繋がりに小さく声が上がり、僅かに締まった後孔に息が止まった。
「っ、かず」
「早く、動けよ…っ」
 切羽詰った言葉の中にある懇願に気付いてしまえば、もう止まらなかった。欲望のままに引き抜いて、奥を穿つ。容赦の無い抽送にぽろぽろと悲鳴のような嬌声が零れて落ちた。
「優しくしたいから、我慢していたんだぞ…っ」
「あ、あッ!っあう、そんなの、いらない…っあ!」
 ずっと、お前を待ってた。島に居ない間も繋がっていたから分かる、身を引き千切られるほどの告白に胸を締め付けられる。それと同時に、今一騎の心を満たす大きな幸福感も。だから総士が欲しい、奥まで感じたい、涙を散らしながら切なげに訴える一騎が望むままに、総士もまた、この場所に帰ってこれた幸福感に満たされながら、熱の海へと溺れていった。



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