低いモーター音が、唸るように部屋の中に響いている。その音の発生源が自分という事実に、ユーリは羞恥心を堪えるように唇を噛んだ。目尻にまた新たな涙の粒が浮かんで、顔を乱暴に枕に擦り付けて拭う。うつ伏せのまま尻を高く上げた体勢はまるで動物の交尾のようで、屈辱感でいっぱいのはずなのに意識することで確かに膨らんだ愉悦に背中が震えた。自分の意思とは関係なく吐き出される荒い息の中に、時折小さな喘ぎ声が混じる。
 露わになっているその場所は小さくひくつき、緩んだ隙間からだらだらと零れ続ける液体と共に細いコードのようなものが二本垂れていた。シーツに落ちたそのコードの先にはスイッチのようなものが付いており、入になっているそれは強弱を付けられるようになっている。所謂ローターというものだ。
「気持ちいいかい?」
 嬉しそうに聞いてくる男に内心で変態、と罵った。抵抗するユーリを押さえ付け、半ば無理矢理ローターを挿れたのは幼馴染で恋人であるこの男だ。普段は王子様スマイルで周りを魅了し、やらしいことなど欠片も興味がありませんという顔をしておいて、その実ベッドの上では恋人の尻に玩具を挿れ、乱れる姿を観察しては満足気な表情をしている。取り巻きが見たら泡を吹いて倒れそうな話だ。
 もっとも、そんな彼に乱されながら感じて興奮している自分も十分に変態だという自覚はある。未だに中で震えているそれを締め付ければ、ぞくぞくと這い上がってきた気持ちよさにユーリは身を捩った。そのタイミングでスイッチをいじったフレンに振動を弱から強にされ、不意打ちのそれに堪え切れなかった声が出てしまう。
「いやだ、っあ、あっああ」
「ほら、逃げるな」
 反射的にシーツを掴み、逃げた腰を強制的に引き戻される。なす術も無く快楽を受け入れることしか出来なくなった体はいとも簡単に限界を超えて、もはや自分の意思では上手くコントロールができない。容赦無く中で動く異物に先に立ったのは本能的な恐怖だったが、強張った瞬間に綻びを締め付けてしまい新たに全身に回った甘い痺れに息が止まった。
「っ、は、も、抜いてくれ…ッ」
「まだ四回しかイッてないだろ」
 薄く笑ったフレンにコードを引っ張られ、ずるずると中に入ったものが移動していく生々しい感覚に開いた口から涎が滴る。はしたないと思っても、それをどうこうできる余裕はもう既に無かった。
「ひあっ、ア、あっ、中が」
「中が?」
「おか、だめだ、おかしく…」
「それが好きだろう?」
 ころころと飴玉を落とすような甘ったるい声で言われた瞬間、ぐしゃぐしゃになったそこに宛がわれたフレンの指が二本、入り口を押し広げて入ってくる。ぐりぐりと無遠慮に浅く周りをまさぐった後、振動したままのローターを指を使って奥まで押し込められた。
「ぁは、ッア、ああああぁ」
 一気に視界が奪われ、あまりの衝撃に俯いていた顔が上がる。ぎゅうと掴んだシーツは荒い皺の波を作って、不自然にかくかくと震える腰の感覚は無い。前は吐き出した精液でどろどろに汚れ、それでも直接触れられていないからか、物欲しそうにひくひくと小さく震えていた。壊れた人形のように声も無く全身で痙攣を繰り返すユーリを見て愛おしそうに微笑んだフレンが、汗にまみれた白い背筋を指先でそっと撫でる。


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