昔、野花で作った花束の中に四葉のクローバーを入れて、ユーリに贈ったことがある。
 見つけると幸せになるというそれを、ユーリにも分けてあげたくて忍ばせたそれに気付いたユーリが嬉しそうに笑ってくれたから、こっちまで幸せになった、そんな記憶。

 思い出したきっかけは、些細なことだった。
 
 息抜きがてら散歩した道に咲いていた野花の中に咲いていたシロツメグサ。それを見て、ふと込み上げてきた暖かくて優しい感情。
 思わず手を伸ばして、摘み取った白い花と色とりどりの野花は今、ユーリの手の中だ。
 
「花束贈られるような柄じゃねーんだけど」
「うん、知ってる」
「オレより女にでも渡せばいいんじゃねーの?」
 あの怖いねーちゃんとか、喜ぶんじゃねえ?と言うユーリに微笑む。
「とっても綺麗に咲いてたから、ユーリに見せたくなったんだ」
 だから受け取ってよ。そう言うと、ユーリは僅かに怯んだ顔をして(でも耳は僅かに赤かった)視線を下げて花束を見る。それから何かに気付いたように目を瞬いた。
 白い指が花束の中心から抜き出したのは、四葉のクローバー。
 指で摘んだそれをまじまじと見ながら、ユーリは目を細める。懐かしむようなそれに、ユーリも覚えているのだろうかと嬉しくなる。自分たちが小さい頃、ずっと前の思い出だ。

「なあ、」
「うん?」
「…四葉のクローバーの花言葉って知ってるか?」
 そう言って、ユーリは腕を僕の髪に伸ばす。そこに持っていた四葉のクローバーを挿すと、彼は満足そうに笑ってことりと首を傾げた。






(わたしのものになってください)




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※その昔、ヨーロッパで、男性が女性にプロポーズするときに、野の花を摘んで花束を作って渡したことがブーケの由来。また、花束を贈られた女性は結婚を受諾する返事として、花束の中から一輪の花を抜き取って男性の胸に挿す。
※四葉のクローバーの花言葉は「私のものになってください」




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