どこで買ったのか、嬉々とした表情のユーリが持っていたのはなにやら怪しい壜で、一見香水かと見間違うような綺麗なデザインのそれを、もし普通の状況で見せられたら間違いなく香水だと思っただろう。何故そう思わなかったのかというと、その壜を出すタイミングが不自然だったからに他ならない。
 雰囲気に流されるまま、いつものようにベッドの上に雪崩れ込んでお互いの服を脱がし合うところまでは良かった。問題はその後、何かを思い出したように行為を中断して、ベッドの上に散らばっていた服をごそごそと探り始めたユーリが自身のズボンのポケットから出したものが先程の壜だったのだ。
 それは何だと首を傾げる僕を見て「気持ちよくしてやるよ」とにやりと笑ったユーリ(ここでとてつもなく嫌な予感がした)に、剥き出しになっていた自分のそれを無遠慮に握られたところまでは辛うじて覚えている。

 少しだけ口元が緩んだ嬉しそうな顔は、ユーリがよくクレープを食べているときに見せるものだけれど、今彼が口に含んでいるのはクレープなんてファンシーなものではない。じゅぷじゅぷと音がなる度に、グロテスクにも思える濃い色が彼の口から見え隠れする。独特な匂いに混ざって、まるでチョコレートのような甘い匂いが鼻腔を擽った。
「んぶ、っんん」
「っ、は…ユーリ」
 背中に走った気持ち良さに、思わず息を吐きながら見下ろした先のユーリは満足気に目を細めて口を離した。自分の意思とは関係無く、いっそ猛々しい程にそそり立ったそれに思わず舌打ちをしたくなる。
「ぷは、っん、すっげえな、固すぎ」
「うるさいな」
「薬、そんなにヨかった?」
 いつもよりおっきいし、なんてにやりと笑うその顔を殴ってやりたかったけれど、体を起こしたユーリに指先で裏筋を撫でられればすんでのところで出掛かった声を堪えるので精一杯だった。そんな僕の様子を楽しむように笑った後、その指先を見せ付けるようにぺろりと舐めるものだからくらりと眩暈がした。
 壜に入っていたのはとろりとした液体で、中身の半分ほどをユーリによってたっぷりと塗り込められた自身はすぐに普段よりも敏感に反応を示す。その時点で普通の潤滑剤ではない事に気付いた訳だけれども、今更後戻りも出来ない状況に目の前で舌を出しぺろぺろとまるでキャンディーを舐めているように僕の性器を舌で愛撫しているユーリを恨めしげに睨む他なかったのだ。そして今、されるがままにこんなことになっている。
 しかし当然ユーリもその影響を受けている訳で、彼の性器も僕と同様に首をもたげている。触ってもいないのに、先端から溢れ出した透明な先走りがてらてらと表面を濡らしていた。身の内に渦巻く興奮のためか頬を上気させ、はあ、と熱っぽい息を吐き出したユーリと目が合う。
「お前の甘くて美味い、チョコレートみてえ」
「そ、馬鹿か、きみは」
「ん、キスしてえ、フレン」
「僕はしたくない」
「なんで」
「君がさっきまで咥えていたものはなんだ?誰が好き好んで自分の出したものなんか…っん!」
「っん、ふっ、んん」
 問答無用で塞がれた唇を割って、口内に舌が入ってくる。些か強引過ぎる方法にぴくりと震えた舌の上に、ほんの少し青臭さが混じった甘い味が乗って吐きそうになった。
「っ、うぇ…気持ち悪い」
「酷くねえ?」
「その言葉、そっくりそのまま君に返す」
「まあ、いいけど」
 自分が出せる精一杯の嫌悪感を表情に出して言った言葉に、気分を害した様子も無くそれどころか楽しそうに笑ったユーリは、上体を屈めて僕の性器を再び口に含む。再び自身を包む柔らかな熱に、自分のものではないような上擦った声が漏れた。




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