少し肌寒いぐらいの冷えた空気は、もう気にならない。気にする余裕も、とっくに無くなっていた。小さな蝋燭が頼りなく照らすベッドの上で、ユーリは喘ぐ。脱ぎ散らかした二人分の服はいつの間にか床に落ちていて、明日皺になるかもなあなんて覚束ない頭で思った。
「あっ、あ、は、ふれ、フレン、もぅむり」
「ん、すごく締まる、限界?」
「げんか、ぁ、イきそ、そこ…」
「ここ?」
「んぁあ!そ、こきもちい、もっと」
「可愛い」
 動きに合わせて、自分の腰も揺れているのは分かっていた。シーツの上に四つん這いになって、後ろからフレンに犯されて喘いでいる状況は羞恥心を限界まで煽るもので今すぐ止めたいぐらいだったけれども、感じる快楽に全て押し流されてしまった。視線を下半身に向けると、先走りをどろどろと零す自身がしっかりと見えてしまって反射的に目を瞑った。
 激しく動かれているせいか、身体を打ち付ける乾いた音とじゅくじゅくと聞きたくもない水音が上がる。フレンの乱れた息遣いと、それ以上に酷く乱れた自分の呼吸音が重なってもうお互いに限界が近いんだと感じて、もうここまで来たら最後までいってしまえと素直に声を上げた。
「ああぁ、ん、フレ、もう」
「いいよ」
「や、奥、強く、ぃああぁ」
「ユーリ、ッ」
「ふ、れ!あ―――ッ、は」
 望んだ場所、もうこれ以上入らないほどの奥を突かれながら、余裕の無い、掠れた声で呼ばれた名前が背中に落ちて這い上がった瞬間に熱が弾ける。手加減できずにきつく締まった中に、熱い液体が広がる感覚。喜ぶように、腰がびくびくと跳ねた。
「ん、ん」
「は、ユーリ、すごい締め付け。持っていかれるかと思った」
「ばか、しね…お前溜めすぎ……」
 予想より遥かに多い量に、涙目になりながら睨めばすこし困ったように笑いながら謝られる。ごめんという三文字に大きく溜息を零せば、予告も無しに抜かれて情けない声が上がった。
「抜く、前にっ、一言言え馬鹿!」
「ごめん」
 質量が無くなったその場所から、中に出された精液が落ちる。太腿を伝うそのなんとも言えない感覚に、目を閉じてやり過ごそうとするがそれを上回る気持ち悪さにぞくぞくと悪寒が走った。早く拭き取ってシャワーを浴びよう。体勢を起こそうとしたユーリはけれどもそのまま固まった。
 指が太腿を撫ぜる。完全に不意打ちだった。悪寒とはまた違う感覚に、上げかけた悲鳴をすんでのところで押さえ込んだユーリは慌てて起き上がろうとした。
 嫌な予感。フレンが何をしようとしているのか、背後のフレンは何も言わない。それがまた不穏な空気を増大させる。もしかしてもう一回やる気じゃねえだろうな冗談じゃないもう体力の限界―――
 何か言おうと開いた口から罵声が出てくることは無く、代わりに零れたのはやっぱり情けない声だった。
「ぁ!?は、っえ?」
「うわ、不味い」
 太腿に熱い空気が掛かる。それからすぐに、少し湿ったざらりとした感触。驚いて見れば、蜂蜜を垂らし込んだような金色の髪が揺れていた。今、こいつは何をした?考える暇も無く、眉間に少し皺を寄せたフレンは顔を近付ける。
「な、ひっ、フレ、ゃめ」
 不意打ちの刺激に驚き収縮するそこから、こぷりと零れる白い液体。日に焼けない白い内腿に、それよりも白い筋を残しながら伝い落ちるそれをフレンの舌が舐め上げる。敏感な場所を這うフレンの舌に、気持ち悪いはずなのに段々息が上がっていく。
「ん、っは、あ」
「ユーリ、震えてる」
「近くでしゃべんな、息、が…ひ、ぁ!」
「ユーリのここ、ひくひくしてるけど。あ、また零れた」
「あぁ、ゃう、見んな!触んなばかぁ、あ」
 顔を上げたフレンに縁を指でなぞられる。その動きに反応してしまって、ひくりと動いたそこからまた白い色が流れ出たのが分かった。羞恥でどうにかなりそうなのに、早鐘を打つ心臓と、はくはくと唇から漏れる浅い息に身体が興奮していることを嫌でも実感した。
 何よりも、萎えていたはずなのにもう一度先走りを零す自身が何よりの証拠で。
「ユーリ、もう一回」
「ん、ぁ」
 背中にキスを落とされる。断ろうにも、中途半端に煽られた状態ではそんなことできるはずも無く。返事の代わりに熱の篭もった視線を返せば、フレンの喉がこくりと鳴った。




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