Not secret 微裏


「小十郎。入るぜ?」

「っ、政宗様!」

とある夜。
俺の部屋の扉が突然開いた。原因は声の主である政宗様、だ。しかし語尾が疑問系であるにも関わらず、何か言う前に入ってくるのは勘弁して欲しい。

「政宗様。俺はまだ何も言ってはいないのですが?」

「Ahーn? 何だよ、固いこと言うなって。それとも俺に見られちゃ悪ぃことでもしてたのか? ああ、オナ」

「そんな訳がないでしょう」

政宗様の言わんとしたことが分かったで、わざと声大きめに否定した。そうしながら手元にある物を背中に回し、そのままベットの下へ。
幸い政宗様は「だったら俺を呼べよ」とか「遠慮すんな」と仰っていて、俺の行動には気付いてないようだった。

「OK .そんなに溜まってんなら俺が抜いて」

「拾い物でも食べましたか。自重して下さい」

おかしい。俺は夕飯、きちんとしたものを政宗様に作った筈だ。まさか変なものが混じっていたとか…。いや、俺の野菜に限ってそんな筈はねぇ……!

「どうした、拳なんか固めて」

「…っは。いえ、」

どうやら無意識の内に拳を固めていたらしく、政宗様に手を握られ指摘されてしまった。握られ、というよりは擦られての方が正しい……。

「っ政宗様! 何時まで擦ってるおつもりか!」

「何時までって、お前が良いって言ってくれるまでに決まってるだろ?」

「何が決まって、う、わっ」

ぼふん。背中に軽い衝撃があった。何当たり前のことを言ってるんだ。と言わんばかりのどや顔の政宗様。そして其の背に見えるのは天井。……何だ、この無駄な早業は。

「いいだろう…? 小十郎」

「良くありません」

目の前に年中発情期がありやがる。さて、どうしたものか。しかしその無駄な早業。勉強とか勉強とか勉強とか。ぜひともそんなのところで役立てて欲しいものだ。そうすりゃ無駄じゃなくなる。
……とにかく、なんとかしなければならんな。このまま流される訳にはいかない。ベットの下には、、アレもあるのだから。

「政宗様。どいて頂きたいのですが」

「えー?」

「首傾げても駄目ですぞ」

政宗様がチッと舌打ち。
ぎろりといつもより目に力を入れてば、政宗様の目と目が合う。

「……わーったよ」

すると意外にも、政宗様はすんなり引いて下さった。年中発情期の政宗様が珍しい。いつもこれなら助かるのだがな…。

「小十郎。腹減った」

「? 先程食べたじゃないですか」

「それでも腹減ったんだよ」

「…分かりました。では何か作って来ましょう」

発情期の次はお腹がすいたらしい。やれやれ、仕方のないお方だ。確か野菜が余ってたな。あれでスープでも作るとしよう。 玉ねぎと人参と葱と牛蒡と、…あと何があったか。
野菜のことを考えながら、俺は自分の部屋を出た。




***




「小十郎、抱かせろ」

「は?」

最後に葱を散らせばスープの完成という頃、本日二回目の衝撃が背中に当たった。しかも今回は、政宗様が腕の上から抱きついてきた。これでは腕が上がらない。

「突然何を言って」

「いいから」

突然なのは何時ものことだとして。一体何が良いのやら。年中発情期が益々悪化したらしい。政宗様の手が動き出す。

「っ! 何をなさるのですか!?」

「何って、エプロン脱がしてんだよ。てか前で蝶々結びとか可愛いな。cuteだな。俺が失神するぞ、おい」

「それは困ります。今直ぐ布団のご用意を」

「くくっ…。お前な、突っ込み所そこかよ? 」

政宗様が喉を鳴らしてくつくつ笑う。そうしてる間にもエプロンは脱がされていたようで、前で縛った紐がはらりと落ちた。

「政宗様! いい加減にして下さい!」

「いいねェ。怒ってるお前もcuteだぜ? 」

駄目だ。何言っても無駄だ。この年中発情期は。でっかい溜め息しか出てこねぇ。

「大体、何ですか。先程からか…わいい等と。この俺がそんな筈がないでしょう」

政宗様は、よくこの言葉を口にする。だが俺にはさっぱり理解出来ん。

「Ahーn? 小十郎がcuteじゃないなら何だってんだ? 」

「いや、何と言われても、ぁっ…!」

先程まで止まっていた手がまた動き、俺の胸の飾りを摘まんだ。自分の意思に関係なく嫌でも身体がびくりと跳ねる。

「ま、政宗様…!」

「そうだな。例えば、こんな風に真っ赤になってる小十郎とか、微かに震えてる小十郎とか」

「このっ…!それは貴方のせいで」

怪しく動く手に翻弄され、立っているのが辛くなる。くそ。

「ベットの下に“好きな人との上手な付き合い方”なんて本を隠し持ってるとか。……なァ? 小十郎」

「なっ… ん、で!う、あ…。まさ、む」

おかしい。何故政宗様がそのことを知っている。確かにベットの下に隠した筈だ。
考えたい。考えたいのに、政宗様の手が自身にまで伸びてきて 思考が回らない。わざと音が出るようにしてきて、益々頭が真っ白になっていく。

「今度こそいいよな? 小十郎」

「っ――!」

獣よろしくニヤリと笑う。そんな顔に一瞬でもゾクリとしたは俺はもう駄目だ。
なるべく目と目を合わせないように、俺は政宗様の背に腕を回した。



Not secret
(なんか怪しいと思ったら、こんなもん隠してやがって…! 反則だろっ……!!)






20120502




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