短い夢 | ナノ

素直になれない-二人の場合-2

部屋に灯るランプの明かりは、すべてを見通せるほど明るくは無いが、すべてを闇に包むほど暗くはない。いっそのこと、この視界のすべてが闇に包まれてしまえばいいとそう思うのに、ランプの明かりも、窓から注ぐ月の光も覆い隠したくなるようなこの行為を淡い光で照らしだしていた。

すでに衣服は破り捨てられ、寝台の脇へと落ちている。
抵抗はしていないが、反射的にシンドバッドから与えられる刺激に拒否反応を示す度に彼は気に入らないと言わんばかりに拘束の手を強めた。
この行為が始まってどのくらい時間が経ったのかは分からないが、すでに身体には鈍い熱が灯り、身体の奥から感じたことのない程の快楽が湧き出てきている。シンドバッドは焦らすようにゆっくりと身体を刺激するが、決定的なものは与えようとしなかった。耳を食み、舌でねぶる。初めはくすぐったかったが今では自然と口から熱い吐息がこぼれるようになっていた。

「・・っはぁ・・んっ」

彼の唇が身体のどこかに触れるたびに、そこから熱が広がり燃える様な錯覚を覚える。
彼の両手は自分の手を拘束しているので、シンドバッドから与えられる刺激はすべて彼の唇からもたらされるものだ。ただ、吸われて舐められて時に噛まれ、口づけされているだけなのに、もう頭には熱が周りとても正常な思考が紡げなかった。

もっと触って欲しい。唇だけでなくて、彼の手から快感を与えて欲しい。そう願っているけれども、少しばかり残った羞恥心がその言葉を押しとどめていた。

ねっとりとシンドバッドの熱い舌が乳房とわき腹の境を舐める。そのまますでにツンと立って存在を主張している赤く熟れた乳首を、シンドバッドの舌がかすめた。
それだけなのに、身体に走る痺れる様な強い刺激に、思わず甘い声がでる。ビクンと反応した身体に、シンドバッドがにやりと笑みを浮かべて見せた。獰猛な捕食者の瞳をこちらに向けて「欲しいと言え」と無言で告げてくる。その瞳に逆らえずに、イオは最後まで残っていた羞恥心を投げ捨てた。

「ちゃんと、触って・・・ください。もっと、触って・・・」

泣きそうな、それでいてどこまでも甘い匂いを孕んだ言葉にシンドバッドの瞳が一瞬嬉しそうに細められる。しかし直ぐに彼は此方から目を離すと、先ほどから待ち望んでいた胸の頂きを口に含むと舌で強めに押しつぶした。
途端に身体にはしる比べ物にならない刺激に、口からは泣き声のようなあえぎ声が引っ切り無しに漏れる。いつの間にか、拘束されていた手は外れていて彼の手はもう片方の胸をその柔らかさを確かめるように、手のひらで包むように揉み同時に、乳首を擦り上げるように刺激していた。

「あっ、んっ!やぁっ・・・!」

自由になった手はもう抵抗する気はなく、それどころか、もっと快感を与えて欲しいと胸に顔をよせるシンドバッドの頭を抱え込むように抱きしめていた。
もう何も分からなかった。ただ、身体を支配する熱から解放されたい。もっとこの熱を高めてほしいという相反する衝動が頭のなかでぐるぐると渦巻いていた。
彼の口に弄ばれていた乳首がようやく解放されて、彼が顔を上げる。シンドバッドの唾液で濡れたそこが外気に触れてひんやりとした感覚を伝えてきて、それにすら、快感を覚えてゾクリを背中が泡立った。
とろんとした、熱に浮かされた目で彼を見つめると、しばらく彼と視線があう。彼の顔が近づいてきた時に、イオも薄く唇を開いて彼の口づけを迎えた。舌がぬるりと口内に侵入して、イオの舌に絡ませる。慣れない口づけに、イオの舌は逃げ惑うがそれを追いかけるようにまとわりつき、シンドバッドの舌がイオの咥内を舐めるように動く。それがあまりにも気持ち良くて、苦しさも忘れてその快感を甘受していた。鼻から漏れる吐息と、時折離される唇の合間に大きく息を吸う音が静かな部屋に響く。下唇を吸われるように離されて、小さなリップ音が聞こえた。
あまりにも気持ちよくて、思わず自ら唇を寄せてもっととせがむ。そんなイオにシンドバッドも嬉しそうに笑うと再び、深い口づけに応じた。
唇に意識を取られていたときだった、するりと彼の手が内腿も撫であげて、イオの身体がすくむ。咄嗟に足を閉じようとするが、すでに彼の片足が足の間に挟まって行って、閉じることはできない。
これから来るであろう衝撃に意識を固めておきたいのに、彼から与えられる接吻がすべての意識を攫って行ってしまう。シンドバッドから送られた唾液を必死で飲み下してした時に、するりと誰も触ったことのない敏感な場所に彼の手が触れて思わず唇を離してあえぎ声を上げた。

「ひぁっ、んっ、だ、だめっ・・・・」

「駄目」と言われる度に彼の機嫌が悪くなり、さらに強い刺激を与えられることを今までの行為の中で学んでいたはずなのに、咄嗟に口にだしてしまう。案の定、シンドバッドは少し機嫌を悪くしたのか、もっと遠慮のない動きでイオの秘所に手を伸ばした。彼の手が動くたびに粘着質な水音が微かに耳にとどいて、すでにそこは濡れそぼっているのだと分かる。先ほど捨て去ったはずの羞恥心が再び頭をもたげるが、シンドバッドは何を言っても止めようとはしなかった。
それどころか、イオの口から否定的な言葉が漏れるたびに、そこに与えられる刺激は強くなる。
何度目かの、「ダメ」を口にした後、彼はついに一番敏感な芽を押しつぶすように擦り上げた。

「あぁっ!んっ、ぃやぁっ・・・!」

大きく身体を震わせて、その快感に耐える。びりびりと稲妻に貫かれたように身体が痙攣してしまい、思わずシンドバッドの首に手をまわして抱きついた。
それに気を良くしたのか、シンドバッドはそこを何度もすり上げる、逃げられない容赦ない動きにイオの身体もびくびくと震えだす。

「お、ねがっ、まっ・て・・!なにか、きちゃう・・・!こわいのっ!」
「大丈夫、イっていいよ」

必死に彼に訴えかけるが、彼は優しく微笑むままで。その顔に若干に恐ろしさを感じるがすぐに快感で何も考えられなくなった。

「ぅんっ、だめっ・・・・もうっ、・・っ・・あぁぁ!」

擦られるだけでなく、敏感な芽をきゅっと摘まれて、イオの身体が大きく跳ねて一際大きなあえぎ声を発した。一瞬強張った身体は直ぐに弛緩すると、大きく息をついて呼吸を整えようとする。
初めて迎えた絶頂にぼんやりと虚空を見つめるイオを愛おしそうに見つめると、シンドバッドは再び秘所に手をやると今度はゆっくりと人さし指をそこに埋めた。
突然、身体に走った違和感にイオは眉をしかめる。気だるげにシンドバッドをみると、嬉しそうに笑みを浮かべたまま、こちらを見つめていた。

「まって・・・、まだ・・息が・・あんっ・・待っ・・」

言葉の途中で、中に埋められた指をそろりと動かされて、再び身体がかぁっ熱くなった。
まだ一本なので苦しくはない、ただ時々指が、体内のある個所を霞めると我慢できないほどの快感が全身を巡るのだ。
じっとイオの表情を観察していたシンドバッドが、そろりと指を一本ふやす。途端に圧迫感を感じて、イオは眉根を寄せた。

「苦しいか?」

気遣うようなシンドバッドの声に素直にこくりと頷く。
しかし、もちろんそれで止めてくれるはずもなく、シンドバッドは指を二本沈めたままそっと残りの指で敏感な芽を擦った。

「ひあぁっ・・!」

途端に背を駆ける快感にイオの背がしなる。一気に上りつめそうになって思わず彼の手を止めようと自分の手を伸ばした。しかし、すぐにその手も彼に捕えられると、そのままシンドバッドの口元へと運ばれる。ねっとりと指の間に舌を滑り込ませて舐めあげる仕草に、もうイオの身体の熱はとどまることを知らなかった。

「だめっ、また・・またイっちゃう・・・!もう、助けてっ!・・・あぅっ、やっあぁ!」

自分に獰猛な快楽を与え続けている男に、必死に助けを求めて縋ってしまう。消して救われることなんてないのに、シンドバッドに助けを求めずにはいられなかった。
最後に、もっとも苦手な場所を擦られて、目の前が白くなる。一瞬すべての景色が消えて背筋から足先まで硬直したようになった。目の焦点があわず、ぼんやりと視線が遊んでしまう。ふと視線を向けた先に、窓から白い月が見えて、その柔らかい光に泣きだしてしまいたくなった。

「イオ」

自分の上で、自分の身体を思うままに操っている男が、そっと自分の名前を呼ぶ。その声に視線を戻せば、切ないような、辛そうなシンドバッドの瞳とぶつかった。

「すまない。だが、おとなしく奪われてくれ」

謝っているようでそのくせ、自分には選択肢はなにひとつとして与えてくれない。だったら初めから謝らなければいいのに。そうすれば、酷い男だと憎むこともできたのに。
イオの瞳を覗き込んで、必死に許しをこう姿に、涙がこぼれた。
そっと、イオの腰に手がそえられ、秘所に熱いものが添えられる。そのあまりの熱に息をのんだ。

「シン・・ドバッ・・ド様、待っ・・」
「愛してる」

その言葉と共に、引き裂かれるような痛みが下腹部に走って、イオはきつく眼をとじた。凶暴な熱が、イオの身体を割いて侵入しようとしていて、その圧迫感は今までの比では無かった。言葉にならない悲鳴が口から洩れる。

「力をっ・・・・抜いてくれ・・!」

辛そうなシンドバッドの言葉に、従いたいが身体が全く言うことを聞かない。自分の体ではないように勝手に力が入ってしまった。
言葉に出来ずに、必死に首を振るとシンドバッドは、腰に添えていた手を離すとそっと頭をなでる。その感触に目を開くとゆっくりと彼の顔が近づき口づけをしてきた。
唇をなめられて、舌を絡ませあう。その感触に、ふっとイオの身体から力が抜けた。
その時を見計らって、シンドバッドがゆっくりと腰を進める。めりめりと音がしそうなほど痛みを伴って開かれる身体にイオは、ぼろぼろと涙をこぼした。

「イオ、入ったぞ。これで、俺のものだ」

口を離して、嬉しそうにそう笑う彼に、イオは悲しくなる。
そんな言葉が聞きたいんじゃない。

「・・・・ぃや。さっきみたいな、言葉がいいです」
「なんだ・・・?」
「『愛してる』って・・・もう一度言ってください」

先ほど彼がこぼしたその言葉に、どれほど歓喜したか分からない。今までの行為も、何もかもすべて許せてしまいそうになるほど自分は嬉しかったのだ。
イオの言葉に、シンドバッドは驚いたように目を見開くと、そっと口をイオの耳によせる。

「イオ、愛してる。ずっと、見てきたんだ。お前は誰にも渡さない。俺だけのものになってくれ」

懇願するような響きを持ったそれに、イオの身体の奥がじんっと熱くなった。
この言葉がずっと聞きたかったのだ。

「私も好き、愛してます。だから誰にも渡さないで」

答えるように、シンドバッドの首にしがみついて囁いた言葉に、彼が息を呑むのが分かった。途端にぎゅっと強く抱き締められてイオの息がつまる。
苦しい程だったが、それすらも甘い刺激に代わってイオは熱い息を吐いた。

「悪いな。もう限界だから動くぞ」

焦るような、切実な響きをもったシンドバッドの言葉に、イオも静かに頷く。いまなら彼から与えられる痛みも苦しみもすべて甘受できる。
イオの意識が変わったからか、イオの身体もシンドバッドを拒むことはせず段々と受け入れ絡み取るような動きに変わってきた。より多くの蜜がシンドバッドの竿に絡み、卑猥な音が部屋に響く。
熱い吐息と、寝台が軋む音、イオが発する甘い声が部屋の中で響き渡った。

「あっ、んっ、やぁっ・・!シンっドバッド様、ダメ、またイく・・・」
「シンだっ・・・、はぁっ、シンって呼んでくれっ」
「シンっ・・・?  んっ、あぅっ・・・」

イオの言葉に、一層嬉しそうに笑って腰を打ちつけるシンドバッドに、色んな意味で頭がくらくらする。

「シンっ・・・!シンっ・・!もう駄目、耐えられないっ!イくっ!イっちゃう!」
「っイオ・・・!」
「・・・っ あぁーっ!」

一際大きな声を発したイオに、シンドバッドも合わせるように、一番奥に腰を打ちつける。途端に、伸縮したイオの中に抗うことなく、熱を放出した。
脱力したようにシンドバッドの身体が、圧し掛かってきてイオは苦しさに息を吐く。でもそれ以上に甘い余韻が身体を支配していて、指一つ動かせそうになかった。

「イオ、もう誰にも渡さない。絶対に離さない、傍に居て欲しい」

そっと呟かれたシンドバッドの言葉に、イオもこくり頷く。必死に身体を鞭打って、シンドバッドの首に手を回すと、「離さないでください」と呟く。
ようやく、素直に彼に告げることが出来た想いに、イオはほろりと涙を流した。


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