俺は溜息をついた。 隣りではいつものように新八と平助がおかずを食べ争いをしてる。それを止めようとする奴はいない。みんな毎日毎食のことで呆れて目を瞑っているからだ。
「そう言えばよ、斎藤」
新八が平助の焼魚を口に放り込んで斎藤を見る。斎藤は斎藤で知らんふりしながら俺の副菜をとってやがる。ふざけやがって。
「名前、最近どうなんだ?」
「・・・それなりにこなしている」
「別に放っておいてもいいんじゃないですか」
死んでも別に誰も困ることなんてないんですし。ぱくぱくといつもは酒を飲んでいる総司は珍しく飯を食いまくってる。大丈夫か?と眉を顰めている間にも近藤さんや新八、平助が反対の意を唱える。あいつも好かれたもんだな。
…
「おーい・・」
平隊士の奴らと一緒に飯を食い、家事を務めてる名前に食い終わったら声をかける。そしたらこいつが食膳をひきに来る。名前が来てからこうなった。 いつも俺が呼びに行くことになって場所も大体分かる。俺らよりも早く飯を食って必ず勝手場に立って声がかかるのを待ってるんだ。
いつものように声を掛けようとするが、言葉が詰まる。ここに入るのはもう今ではこいつしかない。倒れているのは名前しかあり得ないのだ。
「おい名前!大丈夫か!?」
急いで駆け寄って抱き起す。しかしすぐにはぁ、と安堵にも似た息が零れた。
「なんだ、寝てるだけか・・・」
気持ちよさそうに寝ている名前の頭を自分の膝に乗せて髪を撫でてやる。組に入ってその仕事も家事もして疲れないわけがない。逆に倒れない方がおかしいよな。
よく見ればこいつも美女とまではいかずともそれなりに綺麗な顔立ちをしている。こんな男ばっかりな新選組でなく町の娘ならいくらでも嫁ぎ先は見つかっただろうに。 ま、こんなに真っ直ぐに剣術しか見ない奴なんてそうそう居ないから相手が嫌がるかもな。
暫くそうしているとダンダンと足音が聞こえてきてそれがここへ来るのを待った。
(少しでも長く休めるように、見ててやるよ)
20100812//原田
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