「名前ー!めしー!」

スパァン、と気持ちいい程豪快に襖が開けられてあたしは布団の中で顔を顰める。おいおいおい、一応あたしも女なんだけど。もう少し気を使ってくれてもいいじゃんか・・・

「名前ー! めーしー!」

ちっ、と平助に聞こえるぐらいに大きく舌打ちをして布団から出る。うっわー、何かめっちゃ爽やかに笑ってるね、平助。

「・・・あれ、千鶴ちゃんは?」

「名前の代わりに一君と飯作ってた」

そこで一気に目が開く。寝坊、あたしの頭の中でしっかりとそう浮かんだ。慌てて平助がいるのも気にしないで布団をバサバサと畳んでぼさぼさな髪の毛を手櫛で整えながら足早に廊下を歩いて行く。寝巻きだけど一々着替えてられない自体に陥ってるので上着を一枚羽織っている。


「ごめんね・・・!」

台所の中に入ると二人と新八さんが一緒にご飯を作っているのだが物凄く要領が悪いように見える。何よりも新八さんの包丁さばきは危なっかしい。

一生懸命やってくれてるのは分かるから有難いんだけど・・・・ね?


「ねぇ、特にそこの人。出ていいよ、ありがとう(さっさと出てけよ)」

笑顔でそう言うと新八さんは苦笑いしながら出て行き、一くんも何でか分からないが出て行く。よし、これでスムーズに仕事が出来る!

「ごめん平助、髪ご・・・結える物持ってない?」

ゴム何てこの時代なかったんだった。そう思い出して慌てて訂正しながら言えば後ろにいた平助は小走りで部屋に帰って行った。

「おはよう、千鶴ちゃん。手伝ってくれる?」

「はい!」


・・・


「名前ー! 髪紐持ってきたぞー」

「・・・・」

「おーい、名前ー・・・?」

「・・・・・」


部屋から髪紐を取ってきた平助が声をかけても一向に彼女が振り返る様子は無い。それどころかひたすら野菜を切っている姿は余りにも恐ろしかった。何よりも速さが以上だ。
暫く立ち尽くしていると傍でご飯を焚いていた千鶴が傍までやってくる。

「あ、名前さんに渡しておくからいいよ。ありがとう」

「え、わりぃ。じゃ、よろしくな!」

手をあげて平助は大広間に戻る。
その数十分後、見事時間ぎりぎりに料理はそこに運び込まれ何事もなかったかのようにいつもの朝の風景が広がっていた。


やっぱり毎朝毎晩嫌がりもせずみんなの飯を作って、仕事もこなしている名前は凄いと感じた平助は今後あまり無茶を言わないようにしようと思ったらしい。


「はっはーん! 隙あり!」

「あ、何すんだよ名前!」

「はっ、ここでは弱肉強食が掟なんだよ平助!!」

「ちょ、新八っつぁん何すんだよ!名前もさり気なく取るなっての!」

ただ、女の割りに良く食べる彼女を見てやっぱり無茶言わないのは無しにしよう、とか何とか考えたりもしたんだとか。



20100602//無心になってみる




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