「あー・・・やばい、あたしもとうとう大人の階段を強制的に登らないといけない時が来たよー・・・」

「お前から行くって言った癖に何だそれ」


昼間、あたしは新八さんと左之さんと平助とで花街に行くことになった。やっぱり行き慣れてる人達と行くほうがいい気がするし。
・・・一くんは上司だけど行かなそうだもんね。と言うか何か見たくない。

「あの」

玄関で時間を潰すと言う名の駄々ごねをしていると千鶴ちゃんの声が聞こえた。ふと彼ら三人の顔を見れば左之さん以外は気まずそうな顔をしている。

「どうした?千鶴ちゃん」

「私も一緒に連れて行ってくれませんか?」

「いいけ「駄目駄目だめ!!こんな可愛い子連れて行けません!」・・おいおい」

ばっと立ち上がって千鶴ちゃんを見る。きっと彼女はその辺の甘味屋にでも行くと思ってるに違いない。

「えっと・・・どこに行くんですか?」

あたしの否定の仕方に疑問を感じたらしく行き先を訪ねられてぱっと左之さんを見る。この人なら何とか言ってくれるはず・・・!

「俺らはこれから島原に行くとこだけど」

「島原?」

ああー!
千鶴ちゃん固まっちゃったじゃん、左之さん・・!
そんな目で彼を見ると代わりに新八さんが言葉を発する。

「女の子に向かって島原に行くとか、わざわざ本当のこと言うなよ・・・」

「・・・あれ、おかしいな。あたしも女・・・」

むしろ無理矢理何回も連れて行かれそうになったんだけどな・・・あれ、おかしい・・・。
ぐるんぐるん、頭を回してぶつぶつ言っているとふいに聞こえてくる男の浪漫。昼間に島原行くのが・・・

「おとこの・・・ろまん・・」

くくく、と声を出さないように我慢して肩を震わせていると新八さんが恥ずかしさを隠すようにあたしの頭をその素晴らしい筋肉で絞めてくる。

「た、たんま・・・!」

「お前が悪い名前!」

「頭痛いいたい!」

ちょ、ぎぶー!助けてー!と手を伸ばすと絞められる力が緩くなって腕から抜けられる。

「さいてー、しんぱっつぁんさいてー」

あたしより小さい千鶴ちゃんの後ろに隠れながら棒読みする。女の子に手上げるなんてさいてー。

その後、無理矢理島原に連れて行かれたのは言うまでも無い事実だった。


・・・

島原に行ってそれはそれは綺麗なお姉さん方に囲まれて昼間から酒を飲んだ。
あー、男のならよかったのに、と呟くと三人に馬鹿みたいに笑われた。



「はぁ、疲れた・・・」

ぐったりとした様子で屯所の玄関をくぐると土方さんが待ち伏せしていた。

「ひ、土方さん」

「名前、後で俺んとこ来い。ここじゃ話せねぇからな」

それだけ言うとくるりと踵を返して内に入って行ってしまった。あーはい、とあたしは頭を掻きながら嫌そうに返事する。

「え、何々名前って土方さんのコレだったの?」

でろんでろんに酔っている平助があたしの肩を組みながら小指を立てて見せた。

「かーなり酔ってるね、平助」

お酒強いのに・・・どれだけ飲んだんだろう。

「ま、俺らは説教されずにすんだんだから良しとすっかな」

左之さんも顔を赤く染めながら言う。この人もか。
新八さんもでろんでろん状態で彼らを掻い潜るのは中々大変だった。


・・・


「失礼します」

すっとふすまを開けると土方さんと一くんがいた。あれ、あたしだけじゃないの?と首を傾げるとまぁ、中に入れ、と言われる。
あたしは土方さんの言う通りに一くんの隣りに座る。


「名前、どうだった」

「や、まぁどうだったって・・・女のあたしが楽しいはずは無いんですけどね。」

元々、今日島原に行くように指示したのは誰でも無く彼だ。それもあの三人には何も言わずに。
こう言うお色仕事は屯所内であたししか出来ないから仕方なく承諾した。
千鶴ちゃんに行かすわけには行かないからね。


「・・・じゃあ、頼めるか?」

「分かりました」

本当はあんなところで働くなんて嫌だけど、そもそもここに居させて貰わなければ花街で働かなければならなかっただろうからね。
一時だけなんだから我慢しないと。

「すまねぇな。お前にこんな仕事させちまって」

「どうしたんですか、いつもだったらそんな事言わないのに」

くすくすと笑えば土方さんも笑った。

「ま、斎藤にも出来るだけいてもらうから安心しろ」

「よろしくお願いします、一くん」

ぺこりと彼に頭を下げるとああ、と短く返事が帰って来る。多分、あたしが三番組だからだろう。悪いね、二番組だったら新八さんだし喜んで引き受けたろうに・・・。

「まぁ、やられそうだったら殴り倒せばいい」

「それ遊女じゃないですからね、土方さん」


「うるせぇ、分かったらさっさと寝ろ。」

はーい、とだらしなく返事してから二人土方さんの部屋を出る。
あー、明日からかぁ。緊張する。

「大丈夫だ、何かあれば俺が何とかする」

「は、はじめくん!」

キラキラとした目で彼を見る。なんていい人なんだ。
あいつら(特に平助と新八さん)だったらそんな言葉有り得ないもん。

よし、仕事頑張ろう。



20100530//女あそび




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