ある猫のケース


船の中はとっても楽しい。皆はよく話しかけてきてくれる。
僕は人間の言葉を話せないけど、だからか色々な話を聞く。なんでもないことから、重要な秘密まで。

それに、僕の髭は敏感だ。ナゾなんかすぐに見つけてしまうくらいね。
人間の感情と言葉のピースを組み合わせれば、実は、だいたいのことはわかってしまうんだ。内緒だけれど。

たとえば、帽子の先生。
ごくまれに、一人きりでソファに座って、壁を見ていることがある。なにかを考えているみたいだ。
僕のナゾを解く時は楽しそうだけど、それとは雰囲気が違うから、楽しくないナゾを解いているのかもしれない。
なにかはわからないけど、すっごく大きなナゾも持っているみたいだ。

それから、元気な女の人。
いつも明るくって、元気いっぱいで、僕をよくかまってくれる。だいたいは、先生と一緒にいる。
けどたまに一人で歩いたり、手紙をじっと見ている。その時は表情がなくて、なんだか悲しそうな雰囲気だ。
彼女もまた、ナゾを持っているみたい。

元気な男の子と大人しい女の子は正反対だ。
男の子は言葉と雰囲気がおんなじなんだけれど、女の子の雰囲気は読めない。
言葉も、音の具合もおんなじなのに。湧き上がるものがないのはなんでだろう?
皆が言っていた、キオクソーシツのせいかもしれないな。

あとは、眼鏡の博士。
この人は、一緒にいる人によって雰囲気が全然違う。
ごはんをくれるおじいさん、帽子の先生たち、一人きり。それから、青いジャケットの男の人。
男の人が先生と一緒にいる時といない時で、また違う。

男の人もナゾを持っているみたいだ。大きなナゾと、いくつかの小さいナゾ。
おじいさんとよく話をしている。彼らもたまに、黙って窓を見ている。


どうしてだろうね。
この船はナゾを持っている人ばかりだ。


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