ある少女のケース


ひとつひとつエッグを取り戻すたびに、ゆっくりと記憶が戻ってくる。

故郷アスラントの風景。
そしてそれとは別に、現代の人々が営んでいる生活が見えて。
様々なものを、私にもたらしていく。

中には、アスラントが遺した自然を上手に役立て、発展させている人もいた。あの時代にはなかったものが生まれ、見事に共存しているところもあった。
新しい文化を生み出したり。
長く続く伝統を守っていたり。
他の場所にも、遺産を工夫に変えて暮らしている人々がいるのかもしれない。その可能性は、私の心を弾ませる。

「私、知りませんでした。嬉しいです」
「アーリアが嬉しいって、なんだかいいわね」

レミさんが笑って、私を見る。
私は周りを見渡す。
ボストニアス号には、たくさんではないけれど、とても暖かい現代の人々が乗っている。

先生。
落ちついた響きは、遺産より私を導いてくれる。
ルーク。
元気がよくて、知らないことをたくさん知っているの。
レミさん。
笑顔で、やわらかい頬を寄せてくれるひと。
ライアーさん。
静かなよろこびを見守って。
博士。
赤く強い瞳のなかに、やさしさを秘めているわ。


「とても気分がいいです」


ああ、きっとこれが
 “楽しい”
ということなのね。

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