13 ノーカラーストーン


「おじちゃーん! 何してんの?」
「おや、キミは……」

調べそこなった橋の手前まで来ると、エノキが立っていた。どういうわけか、全身から水が滴っている。

「ずぶ濡れじゃないか。風邪をひいてしまうよ」
「ダイジョブなの! エノキ体じょうぶなのよ」
「ダメよ、エノキちゃん。ほら」

エノキは元気よく答えるが、すかさずレミがタオルを取り出して被せた。わしゃわしゃと拭う。
ありがとーお姉ちゃん、というくぐもった声が聞こえた。

「変わった物を持っているね」

ひとしきり水分を取った後、レイトンが言った。

「これのこと?」

エノキの手元を見ると、そこには角ばった透明な石が握られていた。光にあてると反射で煌めく。水晶だ。

「いったい、これをどこで?」

レイトンが訊くと、エノキは慌てた。取られないようにと、水晶を体に寄せる。

「だ、だめなの! じいちゃんのことは教えてあげるけど、エノキの宝物はヨウジンなの!!」
「おやおや、また用心されてしまったようだね」
「これはね、エノキがきけんをかえりみず、あぶない橋を渡って手に入れた“しゅぎょくのいっぴん”なの!」

エノキは胸を張った。

「橋って、この橋を渡ったの?」

言って、ルークが橋を指す。
橋はボロボロで、いつ崩れ落ちてもおかしくなさそうに見えた。エノキの言う“あぶない橋”の条件に合う。

「こ、この橋じゃないかもなのよ! エノキびしょびしょだし、向こうまで泳いだのかもよ!!」
「ちがう橋の向こうならある?」
「この橋じゃないかもしれないけど、ゼッタイ見つからないからね!!」
「………」

力強く否定すれば否定するほど、逆効果だ。水晶は、この橋の向こうで間違いなさそうだった。

ライアーたちは、渋るエノキを上手く家路につかせ、橋を見た。
一歩。足をかけると、橋が軋む。

「巨大な大木がたおれて、自然に形成された橋か。まさに偶然の産物だね」

レイトンが、面白そうな顔をして橋を見た。

「見た目よりしっかりしている。慎重に渡れば問題ないだろう」

サーハイマンが角度を変えて体重をかけ、荷重を調べた。

「これを渡るには、かなりの勇気がいりそうですね……」
「あら、ルーク。怖いのなら待っててもいいのよ?」

レミが笑う。
ルークは「怖くありませんよ!」と言って、

「さあ、早く行きましょう!」

橋の脇に立って、レイトンたちを急かした。
レイトンとレミを渡らせ、ルークがその後ろに続く。
三人が渡り終えたのを確認し、ライアー、アーリア、そしてサーハイマンが進んだ。
橋はぐらぐらと揺れた。揺れるたび音を立て、軋んで恐怖心を煽る。ときたま、後ろから「きゃ」という声が聞こえた。

「慎重に渡りたまえ、ライアー君」

どういうわけか、そのたびに怒られるのはライアーだった。




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