02 カラフルマッシュルーム


木々が開け、広い場所に出た。
現地の住人らしき人達が、毛皮のような民族衣装をまとって歩いている。髪の毛の結い方が特徴的で、キノコのカサのようにも見えた。
入口にあった、村とジャングルを区切る杭のようなものも、細長いキノコのようなデザインだった。この土地にはキノコ信仰があるのかもしれない。

「あそこにいるのは村の少年かな」

サーハイマンが見つけ、レイトンたちは、彼に話を聞いてみることにした。
細身で、カサの厚い少年だ。純朴そうな顔をしている。

「頭むすむす、ムスロッホ! 頭むすむす、ムスロッホ!!」

彼は、よくわからないことを口走りながら、一心不乱に飛び跳ねていた。

「こんにちは。話を聞きたいのだが、構わないかな?」
「頭むすむ……はっ、太陽がこんなに昇ってる!」

突如、少年は勢いよく顔を上げた。
傍目にもわかるほど慌て、「ギ、ギリギリだーっ!!」と叫びながら走り去る。
あっという間にいなくなってしまい、サーハイマンたちは、半ば呆然としながらそれを見送るしかなかった。

「行ってしまったね…」
「ええっと……ギリギリ、村…?」
「アーリア、それはおそらく村の名前ではないよ」

小声でつぶやいたアーリアに、サーハイマンが言った。


気をとりなおし、レイトンたちは別の人間を探すことにした。
村の中へ入っていくが、みな遠巻きにサーハイマンたちを見る。警戒されているようだ。

「ムムムッ!」

焚き火の鍋の番をしていた女性が、進路を塞いだ。

「なんだか刺激的な匂いの人が来たね。こんな匂いの人は初めてだヨ!」

鍋を庇うように立ちはだかる。

「ごきげんよう、お嬢さん。私の匂いがどうかしましたか?」
「動かないで!!」

女性は、くんくんと小刻みに揺れながら、徐々にサーハイマンとの距離を詰めた。なめるように見て、周囲を回る。急に現れた異邦人を審査しているようだ。

「………」
「これは…しばらく動けそうにありませんね」

レイトンたちは、その場に縫い付けられたかのように止まった。レミは警戒して拳を握り、ルークは体を強張らせている。首も動かせないといった様子だった。

「なにかしらこの感じ。なんだかごちそうにぴったりな予感……」

ささくような声で不穏な言葉を落とし。
女性は、サーハイマンへ指を突きつけた。

「あなた! 味見をさせるのヨ!!」
「――!?」




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