09 使命の子
サーハイマンとレイトンは、アスラントの残した英知を見事に活用し、薬を調合した。
目覚ましによって、大人たちから聞かされた真実は、拍子抜けするほど簡単なものだった。
原因は、お祭りの後に大人だけで集まって開いた食事会。そこで出されたバター焼きのキノコが、睡眠へいざなうネムリダケであったのだ。
「おお、よくきなすったね。不死鳥をよみがえらせた英雄たちよ」
レイトンたちは、復活した長老に、寺院へと呼び出された。
目を細め、長老は一同を出迎える。寝ていた時とあまり変わらないような、小粒の瞳だった。
「あなたたちが目覚めさせてくれなかったら、ひと月ほど眠り続けてしまうところだった」
「お力になれたようで幸いです。私はフォスター・サーハイマン。それから…」
「エルシャール・レイトン。どちらも考古学者です」
「ええ、私はイッチ。この町の長老でしての」
帽子を上げたレイトンがお辞儀をする。サーハイマンが「ところで」と本題に入った。
「私たちに用というのは?」
「うむ。私たちの一族は、代々、この地に残る伝承に記された不死鳥の涙と卵を守り続けてきた。伝承の一節に、こう記されている」
『使命を帯びた少女が空から現れ
不死鳥をよみがえらせたとき、その卵を空へかえすのだ』
言って、イッチは懐から布にくるまれた何かを取り出した。
丁寧に捲っていくなかから現れたのは、青く丸い石。まさしく、目的のエッグだった。
「これは空から来たあなたたちのことだろう。卵はあなたにお返ししよう」
「…よいのですか?」
「もちろんですとも。でなければ、私たちはなんのために伝承を守ってきたのか。わかりますまい」
「………」
「きっと私たちは今日のために、不死鳥の卵を守り続けてきたのだ。受け取ってくだされ」
「ありがとう…」
「旅のご無事を祈っておりますでの」
イッチは、しっかりとアーリアの手を握った。アーリアも微笑みでそれに応える。
もう、アスラントの使者としての自覚が芽生えているのだろう。しゃんと立つ姿からは、凛々しいオーラが感じられるような気がした。
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