007


 再びホールへ戻ってきたレイトン一行は、鳴り続けるオルゴールを見つめた。むき出しのオルゴールは、その可憐な音色とは裏腹に、ゆるやかな絶望を奏でる。

『制限時間が過ぎました』

 音が止み、場内にアナウンスが響き渡った。声が回答を告げる。

『もっとも古いモノとは、今も夜空に輝き続けている星たちのこと。現在、このホールに残っている皆様。おめでとうございます』

 周囲から、安堵のため息が漏れる。防音設備に阻まれて聞こえてこないが、外はいったいどうなっているのだろう。
 シリンダーが回転して、オルゴールはまた、次の曲の演奏を始めた。声が新たなナゾを言い渡す。


【ナゾナンバー002】
一番大きな王冠が見える場所へ集合せよ


「“一番大きな王冠”?」

 ライアーは、劇場内に飾られている様々な王冠を思い浮かべた。大小もそうだが、数もかなりある。それをいちいち見比べる時間はない。

「このゲームの主催者は、なにかと人を集めたがるのが好きなようですな」

 誰かが言う。
 みな同じことを考えているらしく、次々に自らの考えを述べていった。ライアーも、脳内で検討を始める。

「レイトン先生。今度のナゾ、解けますか?」

 ジェニスが、不安そうにレイトンに言った。
 それを見て、今まで活躍の場がなかったルークが声をあげる。

「せ、先生! このナゾは、僕に任せてください!」

 役に立ちたいと言わんばかりの名乗り。「ルーク?」と名を呼ぶジェニスに、

「大丈夫です、ジェニスさん。僕はレイトン先生の一番弟子ですからね!」

 どんと胸を張って、ルークは愛用の手帳になにかを書きはじめた。ぶつぶつと呟いて、自分の思考を整理している。
 この少年は、回転が速いレイトンの元へ居ても、思考放棄を選択することはないようだ。女性を気遣う面もある。
 ライアー達は黙って、将来有望な英国少年の言葉を待った。

「……そうか! 今僕たちが乗っているのは、クラウン・ペトーネ号です!」

 ルークの発言に重なるようにして、髭を生やした男性が叫んだ。

「でかしたぞ坊主! この劇場の入口はたしか、クラウン・ペトーネの名を載せた、大きな王冠の形だったよな!」

 人々はそれを聞いて、我先にとホールを飛び出していった。騒がしかったホールが、静寂を取り戻す。

「行こう」

 レイトン達も、ゆっくりと出口に向かって歩き出した。




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