【はじまる前の話】
-the Not Too Distant Future-





「わあ、いい天気!」
「おはよう、レイ」
「おはようセシル。いい天気だね!」
「おはようございます、レイ」
「おはようございます。シスター」
「いい天気ですね」
「はい! 今日はなにをしますか? かくとうですか?」
「まずはシーツを干しましょう。それから、お使いに行ってもらいます」
「あ、この間のパースエイダーですね?」
「はい。あの人は無愛想ですが、腕は確かです。頼みましたよ」
「はい! まかせてください!」
「場所はわかりますか?」
「南通りですよね。ところでシスター」
「どうしましたか?」
「ぶあいそう、ってなんですか?」


***


「さて、行きましたね。セシル」
「そうですね」
「今日は、帰ってきたところを撃ちます」
「……はあ。シスター」
「なんですか?」
「貴女、ひょっとしてレイを外に出す気ですか?」
「おや、何故です?」
「旅人も滅多に来ないこの国で、パースエイダーは必要ないでしょう」
「そうでしょうね」
「貴女には感謝していますよ。このような国を見つけてくださって」
「この国の噂は、旅人時代もよく耳にしましたからね。ここにいれば、私たちの情報が漏れることはないでしょう」
「ええ。でも、それとこれとは話が別です。レイには訓練なんていりません。即刻やめてください」
「残念ですが、お断りします。これは、私の趣味なのですよ」
「どういうことですか」
「人は、持っている知識を教えたがる生き物なのですよ。“人生は壮大な暇つぶしだ”という言葉をご存知ですか?」
「誰の言葉ですか?」
「私の言葉です」
「…………」
「正確には、私の古い友人の言葉ですが」
「いりませんよ、そんな情報……」
「そうですか? 残念です」
「残念がってないでしょう」
「ええ」
「…………」
「あなたも、昔のお話をしてはいかがですか? 旅をしていたのでしょう?」
「遠慮しておきます。余計なことは耳に入れたくありませんから」
「おや、過保護ですか?」
「何とでも言ってください。どうせ出ないんです、必要ありません」
「こうは考えられませんか?“備えあれば憂いなし”」
「“人生は重き荷を背負うて行くが如し”。余計なものは要りません。過去も未来も」
「あなたはそれで良いのですか? モトラドでしょうに」
「僕は彼女に救われた。彼女が幸せになるならそれで」
「そうですか」
「貴女もそうなのでは?」
「…………」
「この話はやめましょう。所詮、仮定の話です」
「……。そうですね」
「…………」
「…………」




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