空白の時間が続いた。
そのうちに雪がふりだして、セシルはふり積もるそれを見ていた。
しばらくしてレイが戻ってくると、セシルは優しげにおかえり、と言った。

「ただいま。セシル」
レイがちいさく応えた。

「どうして、世界はこうなんだろう。事実はおんなじなのに」

言って、そしてひとりごとのように聞いた。

「本当に世界は美しいのかな? あそこにいた時は、それはもうすばらしいもののように思えたのに」

足元を見るレイに、セシルは言った。

「それはまだ、わからないさ」
「私の進んでいるこの道は、ちゃんと正しいのかな?」
「それもまた、わからないさ」

終わってみなければね、とセシルは言った。

「終わったら、わかるの?」
「終わるときに、わかるのさ」

そしてセシルは「どうする?」と聞いた。

「目標に迷った時は、原点に立ち返れとも言うよね」
「原点……」

レイは考えるようすを見せた。
一度、風が大きく吹いて、新雪をまきあげた。

レイは髪の雪をはらって、

「あそこに、行ってみようと思う」

言葉を押し出すように言った。

「もしかして、旅は終わるかもしれない」
「“最後の願い”ってやつか」

セシルが納得したように言って、レイの顔がゆがんだ。

「ごめんね、セシル」
「これは君の旅だから。縛られることなんて無いんだよ」
「…ありがとう。でも、ごめん」

レイは言って、セシルのハンドルをにぎった。




On the Way【END】



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