暇そうに店内をモップを使って掃除する麻佳を見たあと、
グラスをいつも通り穏やかに磨いている店主目蓮真香を見る。
この人たち本当に似てないなあ、とぼんやり考えていると真香がどうしたんだい?と
訪ねてきたのでなんでもないですとごまかしてみる。
「それにしても、幽斗くんはいつも暇そうにしてるね」
「え、えぇ。今は人を手配する気はないんです。面倒事には首突っ込みたくないので……」
東京人をNECTERへ送ることは未だに続けていたのだが、
それ以外のことは今はやっていない。
というのも、親荒神やら反荒神やらで忙しいご時世。
親荒神に商売をしていれば反荒神に襲われて逆になれば親荒神に襲われる。
まあ面倒なことこの上ない。
護衛の目蓮麻佳はどうやら反荒神として活動をしたいようで
最近はここ喫茶店『目目目』で溜め息をつきながら掃除ばかりしている。
俺の護衛はどうしたの?と言いたいところだが黙っていよう。
「真香じいさん、俺やっぱ、」
「麻佳くん、君のやらなければならないことはなんだったかな」
麻佳が荒神に対して行動を起こそうとするが真香さんが
毎回こうやって麻佳を止めている。流石、といったところだろうか。
「おい幽斗!お前感心してる場合かよ!」
「えぇ?なんで俺に向かって怒ってくるのかな……」
急に麻佳は俺のほうへと視線を動かしモップの床を拭く方を俺の方へと
向けるとなんでってなんでだよ!と思い切り声を荒げた。
正直言ってうるさし汚いんだけどなあ……。
「お前荒神むかつかねえのか!」
「うん」
「うん、じゃねえよ!俺はムカつくんだよ!あのらいぞーってやつとか!
威張ってる特高のやつらとかよ!!
てかたまに店に来て無茶苦茶にしてったりするじゃねえか!あいつら」
「まあ、そうだね」
どうやら麻佳が荒神に対して怒っているのはこの店が定期的に特高の者によって
荒らされていることらしい。
この喫茶店『目目目』は親荒神だろうと反荒神だろうと関係なく
店に入れもてなしている。たまーにどちらとも匿ってあげたりといった行動もしている。
だから特高に目を付けられているとか。
「あーもう!特高のやつらむかつく!」
「麻佳はむかつくしか言わないんだね」
「あァ!?」
「え、えーと。ごめん」
ギロりと睨んでくる麻佳は怖いので適当に謝って真香さんのほうへ
助けてといった目線を送れば優しい目で俺たちの茶番を見ていた。
そしてあぁ、お客さんが来たようだね、と俺達に告げたのだった。