蹴られた腹がジンジンと痛む。
最悪だ、どうして一番上の兄がここにいるんだ。

私はよろよろと立ち上がり二人をにらみつける。

最悪だ。どうして二人とも反荒神勢力にいるんだ。



「窃哉兄さんじゃん」
「よぉ、久しぶりだな」

親しい友人に挨拶するかのようににっと笑う窃哉兄さん。
私は転がったためについた泥を煩わしく思いながら窃哉兄さんの顔をみる。
最後に見たのはいつだったか。だが最近会った気がした。

それはそうだろう。
窃哉兄さんは盗賊集団のようなものを率いて荒神一族の屋敷に忍び込んで
盗みを働いたりと色々とやっており、先日警備をしていた時に
ばったり出くわしたのだから。

「窃哉兄さんはどうしてここにいんの?」
「コエー顔すんなっての。別に女々しい弟と可哀そうな妹の顔を見に来ただけだっての」

ちぇっ、俺のこと邪魔なのかよ、とぶつくさいう兄。
その様子に笑ってしまいそうになりながら窃哉兄さんの後ろにいる黎実兄さんを見る。
黎実兄さんは未だ呆然としていた。


「今日はもう帰る」
「なんだ、俺とは戦わねえってか?」
「違うってのー。窃哉兄さんと戦うんだったらそれなりの準備が必要でしょー」
「そりゃそうだ」

窃哉兄さんの能力は盗む。
それは能力だろうと武器だろうとなんでも盗むのだ。
彼の能力範囲内ならば心臓を盗むことだって可能なのだ。とてもめんどくさい。

「じゃあまた今度な」

窃哉兄さんは先ほどのあいさつと同じようにまた挨拶をしてくる。
私は思わず苦笑いして手を振って言った。

「また今度ねー」





神澤洸は普通に特別高等警察が再編された後も
第三課として動いていた。
といってもこんな世の中、窃盗事件なんてたくさん。というかないほうがおかしいだろう。

よく一緒に行動していた先輩はいなくなり、からかい相手もおらず、
同じ課に所属していた人たちはほとんどいなくなっていた。

神澤洸はかなりまいっていた。
そんな時だった、武装親衛隊への異動の話が来たときは。




「洸」
「蘭さん」

武装親衛隊に配属されたとき、従妹だった蘭さんが訪ねてきた。
蘭さんは昔と変わらずに適当でそれでいて芯を持っている人だった。
だからだろう。彼女に一度だけ本音をこぼしたことがあった。

「……馬鹿な兄貴たちを持つと大変だねィ」

その時蘭さんは呆れながらもそういっていた。
自分はその後なんといっていただろうか。




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