兄さんと鳶さんが死んでどれくらいたったか。
それはわからないけど、鳶さんのほうがあとに死んでしまった気がする。

使い慣れた拳銃を手に昔を思い出す。
一応、何概館の部屋は借りているつもりなのだが、あそこは
まだ残っているのだろうか。
久しぶりにあの住人たちに会いたい、とか。
同じ学年の人たちは元気だろうか、とか。

そんなことを思う。

「榛ぃ、そろそろ行くぞー」
「あ、待ってください!」

遠くから聞こえるのは手伝っている研究者、東雲聡の声だ。
役者志望だったあの頃と比べると全く違う職業についている自分に笑いが出た。

兄、色摩梟は第三次世界大戦がはじまったころに東雲聡に殺された。
正確に言えば実験台にされたというべきか。
東雲聡の実験は聡のようなほぼ機械化をした人間を作ることらしい。
そんなこと、他の研究者たちができているというのだが、東雲聡にはまた
別のねらい目もあるとか。

(馬鹿みたい……そんなことで僕の兄さんが)

ギリ、と噛んだ唇が痛い。
だからこそ俺は東雲聡の助手となりそして殺すためにここまで生きてきたんだ。



部屋を出て聡のところまで向かう。
無機質な壁に続く先には遅いと言わんばかりの顔をした東雲聡がいた。
東雲聡はパッパと反荒神一派を捕獲しに行くぞといって先に歩き始めた。



(荒神の天下なんてどうでもいい)
兄さんの仇を取れればそれでいい、だから荒神がどうなったっても良いのだ。
世の中には反荒神一派として色々とやっているらしく、
たまに荒神についての情報を渡せばそれにたいそう食いついてきて面白いものだった。
逆に反荒神一派の奴らの情報を荒神に渡せばそれも面白い結果となった。

(荒神の天下が続こうと続かまいと、俺はもう……)

そして今日もフードを深くかぶり誰にも気づかれないように東雲聡のあとをついていくのだった。


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