「主、先に下に降りてもらえまスか」
前にロイファー、その後ろにファルケといった形で
とぼとぼと下へ向かっていた二人だったが、ふとロイファーは
ファルケに顔をみずに言った。ファルケはじゃあそうさせてもらうかなあ、と
ニッコリと笑って(といっても前髪のせいで顔はほとんど見えない)ロイファーが歩いていた道とは
反対方向を歩いて行った。その光景を見てロイファーは胸を下したと同時に、
アレ、自分今まで逆方向進んでたの?と単純な場所を何故かぐるぐるとまわっていたらしい彼女は
どうやら方向音痴なようだ。
*
ロイファーには絶対に道を任せてはいけない、そう心から思った。
だが、今回の抗争で一回全部壊れてまた作り直してもらおうかなあとも考える。
そもそもここ大阪帝国にいるのはあくまでヤクトの生まれ変わりがいるかもしれない、と
いったガセかもしれない情報をもとにいただけだ。
こんなヤクザになんてなる気はさらさらなかったのだ。
(まあ、ヤクトっぽい人が黒牙會の構成員って情報をもらったから結果的には万々歳ってとこかなあ)
はあ、とため息をつきながら抗争のせいで揺れる建物のなか進む。
さて、ここからはどうしたものだろうか。
ロイファーは多分52階で俺を追ってくる敵の足止めをしてくれている。
だけど俺の近辺を護衛してくれるモノはいない。
(新しいヤツらを出そうにも時間がかかる)
51階についてからウーンと首をひね、ケースを見つめていると後ろからマスターと聞いた声が。
振り返れば黒牙會の構成員で俺のアンドロイドのシュプリンガーこと騎場駿がいた。
駿はにっこりという機械には似合わないそんな顔つきで俺の前で笑った。
「他の護衛がいなければ私が傍におりますわ」
*
ロイファーは少し困っていた。
ただ単に主であるファルケに単独行動をさせたからである。
すぐに敵を殲滅して追いつけると思ったのだが
「これは困った事態でありまスねぇ」
目の前には瓦礫の山。どうやら彼女は閉じ込められたようだ。
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