「下までいけって言われてもなあ……」
「主、素。素が出てまスよスが」
人がかなりいなくなった最上階では髪の毛で表情は見えないが、恐らくは
この状況を少しばかり楽しんでいる男―――ファルケと
それに対し呆れている彼の護衛――ロイファーがいた。
ファルケはおっとアカンアカンとケラケラと笑って
先ほど下へと消えていった二人が飛び降りていった穴を見つめる。
「ロイちゃんロイちゃん」
「その呼び方は何度もやめてほしいといってはずでスが」
「ええやろそんなコト。ほな、わしらもいこか。もたもたしとったら敵さんぎょーさんと下につくで」
「了解でス」
ファルケは穴を見つめた後にロイファーを呼びつけては、穴から降りるかと思えば
お行儀よく(?)階段から悠々と下へと向かう。
勿論だが、先頭にロイファーを、後方にファルケがいる。
そもそも彼は戦闘なんてもっぱらやる気などないし、どっかの金髪軍人研究者みたいに
戦闘狂でもない。というかそんな技術がないのだ。
「ロイちゃんがいればわし安泰やわー」
「主、煩いのでありまス、黙れ、でありまス」
「ロイちゃんひどいっ」
こんな軽口をたたいているがファルケはまあこんな戦闘よくやるよなあと
実は考えていることもあった。いやはや、こんなことになる前にパパパっと
西京に逃げてりゃよかったと。
「あ、でもまだヤクト見つけてへん」
「ヤクトさん、でありまスか」
「せやせや。あーなんや、この抗争に参加してたら面白いんやけどなあ」
まあ、わし勝てないからそんときはロイちゃん頼むで、とファルケはロイファーの肩を
ポン、と叩けば了解でありまスと(包帯で見えないが)にっこりと笑えば敵をみつけたのか
いってまいりまスと障害になるであろう黒牙會の構成員を倒しにいった。
「いやあ、本当にロイファーの性能はいいね、
俺戦わなくていーし、もし壊れても他のやつらいるし、楽々」
ポンポンと今度は一緒に持っていたスーツケースをたたく。
そしてロイファーが去って行った方を見れば動く必要を感じなかったのか、
スーツケースの上に座って、欠伸をかいていた。
戻る