ロー×ルフィ



だんだん沈みゆく太陽によって、海は宝石でもばらまかれているんじゃないかという具合にとても輝いていた。握るハンドルの力を緩め、緩やかに右のカーブを曲がっていく。
ゴツゴツとした岩道に車体が激しく揺れることにおれは吐き気を覚えていた。にもかかわらず、隣の麦わら屋はのんきに寝ていやがる。ううんと寝返りを打とうとしたのか、いかんせんここは車の中だ。狭くてなかなか寝返りをうてないことに不機嫌そうな顔をした。
そろそろ起きろと言い掛けたいが、麦わら屋に甘いおれはなかなか起こせなかった。要するにバカップルである。だけど、今起こさないといつ起きてくれるのか不安があった。
試しに名前を呼んでみる。

「麦わら屋、そろそろ・・・着くぞ」
「・・・・・うーん」

まだ起きる気配はなかった。
だんだん同じことをしていくうちに太陽はすっかりと隠れてしまった。最後のお天道を眺めるのはここまでか。電灯がポツポツと付き始め、寄り道でもするかととっさに思いついた。
客が寄りつかないようなところにあったコンビニに止め、寝ている麦わら屋をおいていった。温かいコーヒーとチキンナゲットをよぼよぼのじーさんに買ってもらった。

「夜遅くにひとりの若者がこんなところにいるとはな・・・」

喋り好きのじーさんは黙っていられなかったのか、おれに喋りかけた。答えること次第正直面倒くさいと思ったが、じーさんの喋りに軽くつきあってあげることにした。

「ツレがいるので、ひとりじゃねえよ」
「そーかそーか。でも、このあたりは気をつけろじゃろい。よく人が消えおるぞ?」
「は、もともと知ってる上で来たんだよ。じゃあな。ツレが待ってる」
「そーかい」

じーさんはまだ言いたげそうだったが、それを聞く前にコンビニから出た。車に入ると麦わら屋は起きていた。

「肉ー。うまそうなにおいすんぞ」

どうやら買ってきたチキンナゲットのにおいですぐに目覚めたらしい。食い意地がはりすぎだと言いたいが、なんせ麦わら屋のかわいいとこだ。やるよと言って、チキンナゲットを麦わら屋に渡す。
その隙に麦わら屋のおでこにキスした。

「よく寝れたか?」
「うん、寝れた」
「それはよかった」

車にエンジンをかけて、また走る。先の見えない道。ずっと走り続けていく車のタイヤは見たこともない泥だらけだった。麦わら屋はもぐもぐとかわいい音でチキンナゲットを食べてはちらりとおれを見る。

「なんだ?」
「いや、トラ男はやっぱりカッコいいなって」
「・・・・・返事に困るんじゃねえか」
「にしし。おれたちはずっとずっと一緒にいような」

それは誓いのようでかなわないことだった。だから、おれも麦わら屋もらしくない道を選んでしまった。現実逃避旅行でも言ってもらおうか。ただし、期限のない旅行だが。

「ああ。そうだな」

柔らかに微笑んだ。麦わら屋が隣にいてくれるなら、おれは何だってするのだ。さあ、どこに行こうか。アクセルを一段と強く踏んだ。



∴明日がなくても笑えるように
title/彼女の為に泣いた
かけおちロール





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