高杉と銀時

※攘夷時代




「絶対上げない」

高杉は銀時が抱き抱えているそれをくれと言ったら、銀時は頑なにあげようとはしなかった。銀時はそれを大事そうに大事そうに抱えていて、

「上げないったら上げないバカヤロー」

奪えまいと必死でそれを強く強く抱きしめたのです。あちこち死体が転がっても、銀時はそれを見向きせずにそれを離れていってしまわないように抱きしめます。

「なあ、」
「やだ」
「なあ、」
「やだ」

ただこねている子供を相手しているようだと高杉は呆れる。それでも、銀時はそれを捨てないといけないのだ。
か弱い生き物。
とてもとても弱い生き物。天人と比べるなんてとんでもない。
そんなか弱い生き物は銀時が手離したら、あっという間に死んでしまうのでしょう。
強い生き物にやられて、誰にも知らされることなく静かに死んでいく人生だなんて、人間と同じはずなのに。

「高杉、何で」

銀時はそれを抱いているのに、奪われてしまったような顔をする。

「何で、何で、優しく抱いたのに」

意味分からない。
と叫んでいるような気がした。
本当に意味分からないと叫びたいのはこっちの方だ。そんなに強く抱きしめたら、

「何で、動かないんだ」

そうして、か弱い猫はあっという間に強い生き物によって死んで行きました。
なのに、銀時は冷たい目で腕のなかで命を失ったただの抜け殻を見つめる。こんなに簡単に消えてしまう命は人間も天人も変わらないのだと知っていても、銀時はもうどうすればいいのか分からなかった。
だから、その猫を力加減が分からずに無意識に殺してしまった。

「ごめん」

放された言葉は猫に向けてだけではなく、他の人に向けて言ったかのように聞こえる。
ずっとだんまりを決めていた高杉は銀時に近付く。激励するでもなく、同情するでもなく、ただ一人の友人として、銀時の背中に渇を入れて叩く。

「ぐずぐずしてんじゃねえよ。次行くぞ」
「今、痛かった」
「そんくれーでいちいち言うんじゃねえよボケ」
「お前、いちいち俺をムカつかせたいよね黙れ」

分かったよと銀時はゆっくりと立ち上がり、それをやっと手離す。せめてもの報いとして、硬くて冷たい土の中に眠らさせてあげた。

「結構好きだったのに」

そう言った。
高杉は単純に考えた。
好きなら、殺すかよ、って、どこの遊女だって呑気に考えていた。まあ、そのことは口を裂けても、銀時には言わないことにした。



∴おどろおどろしくって素敵
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