黒子と火神




純粋無垢とはこういうことか。
黒子はそう実感した。神様の申し子と言われても違う気がする。何故なら、彼は馬鹿だからだ。でも、彼の純粋さは本当に人間かと思うくらいにとても透き通っていた。
アメリカの帰国子女だから、多少の汚れはあると思っていたのに、油断していた。予想以上に純粋で真っ直ぐでその気持ちは気持ち悪いくらいに本来あるはずの汚れを浄化していた。

「黒子の彼女いるんだへえ」

ちょっとからかってみようと思ったがこれだ。最初は期待通りに驚いてくれたけど、順応力が高くすぐに冷静になった。
黒子は思った。言葉を全く疑わないところが逆に僕の良心が痛む。
嘘ですよとカミングアウトするタイミングが失ってしまった。火神は黒子の嘘のカミングアウトを聞いて、そわそわとしていた。

「黒子の彼女、俺知ってる奴?」
「え?べ、別の学校ですよ」
「そっかー、意外だな」

意外でもなんでもない嘘ですが。

「黒子の彼女今度会わせろよ」
「嫌ですよ。何故そんなことをしなくちゃいけないんですか」

火神はニヤニヤしながら、笑う。その笑顔が憎たらしくて、でも、幼さがどこかが漂っていてかわいいと思ってしまった。これぞ、まさに可愛さ余って憎さ百倍!あれ、意味が反対ですね。

「お前の彼女に会ったらさ、黒子をよろしくなって言いたいんだ。ほら、俺はお前の相棒だろ。でも、相棒と言っても卒業するまでだろうなぁ。彼女なら、ずっと一緒にいるんだろ。だから、会いたいんだ」

黒子はとてつもない後悔をしてしまった。あんな嘘を付かなきゃとか、さっさとバラせば良かったとかいろいろと見返すところがあっても、後の祭り。まさか、そこまで考えてくれるとは思わなかった。
君の影であることに誇りです。むしろ、光栄である。ただし、影には影のリスクがあることを黒子は初めて知った。
火神君、本当にごめんなさい。彼女なんていないです。ただ慌てる君が見たかっただけなんです。

「火神君、」
「ん?」
「余計なお世話です」
「何だよ!おい!」
「でも、ありがとうございます」
「……まあ、いいか」

純粋無垢とはこういうことか。
単純馬鹿とはこういうことか。
黒子はちょっと光の将来が不安になった一部始終でもあった。そして、彼に二度と嘘を付かないと決意した瞬間でもあった。




∴馬鹿だね、全部嘘だよ
title/告別





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