真っ盛りの夏。こんなに暑いのは毎年のこと。暑い、熱い、厚い、篤い、荒憑い…漢字誤変換失敬。暑すぎて可笑しくなるような温度に銀時はどうしようもない。暑さだけはどうしようもない。セミのミンミン、鳴き声がかぶき町を余計暑くさせるだけだった。セミの鳴き声を聞けば、もう夏かと実感する。
「暑いアル…」
「暑いですね」
「暑いな」
三人揃って、「暑い」の単語を含んだ言葉を言う。暑いに暑いって言っても、余計暑くなるだけ。
「止めだ止め。暑く言うのは止めよう」
「そうですね……」
「どうしたらいいアル?」
神楽はフローリングの上で寝そべっている。新八は太陽の光を調節して、障子を閉めたりしてる。銀時はインナーを着ておらず、昼間に珍しく着物だけだった。
温度40℃。
地球温暖化。
人間のせいか、はたまたは天人のせいか。
今となっては誰でもどうでもよくなっている。
「涼しいと言い続けましょう…」
新八の提案。
それに対して、神楽は少しぎこちない表情を見せる。
「何か虚しくないアルか?」
「神楽、それ、俺も思った」
神楽の考えと一致する銀時はパタパタと手で顔を扇ぐ。あまり効果がないように見られる。
「でも、言って見よっか。何もしないよりマシだろ涼しい」
「涼しいですね〜」
「涼しいアルー!」
「涼しいな〜」
「こんなに涼しい日は久しぶり〜」
「定春も涼しいって言ってアル!」
「ワン!ワン!」
寝そべっている定春も協力する。しかし、その鳴き声は普通の犬より大きいものの、いつもより弱々しかった。
銀時はさらにレベルアップを仕掛ける。
「こんなに寒い日なかなかねーぞ!」
気温、40℃。寒くもない気温、
むしろ、暑い気温。
「ひゃほー!かき氷が凍るほど寒い!」
かき氷を作ったら、すぐに溶けるだろうに。
「あ、雪が降った!降ったアル!」
暑い日に雪が降ったら、それでこそ天変地異に匹敵するくらいにありえないである。
「って、文章が涼しくなっただけだろ」
「すみません…確かに虚しくなりました」
「もうやだアル…」
三人揃って言う。
「「「暑い」」」
∴暑いなうなう