そう信じてた
そのまま眠ってしまったユキを寝かせ、ジャーファル達は部屋を後にした。
「ユキはスラム街で暮らしてた時の友人なんです。カシムやマリアムたちとも仲良くて、特にマリアムは同い年だったから。だけど突然行方不明になって……そういうのは頻繁にあったんです。…まさか、生きて再会できるなんて思いませんでした」
別室にて、アリババが話した内容は次のようなものだった。その内容に衝撃を受けないものはいない。
「ということは今…」
「モルジアナとおなじ14才になります」
「えっ、」
モルジアナが驚きの声をあげ、手を口に当てた。ユキの様子を思い出したのだろう。苦虫でも噛んだような表情になった。アリババやアラジンもどこか沈んだように押し黙っていた。空気は重い。そんな雰囲気を変えたのは、やはりあの人だった。
「そんなに暗い顔をするもんじゃない。ユキは死んでいるわけじゃないんだ!名前がわかったことと再会できたことは喜ぶべきことだろう?」
シンドバットの言葉に顔をあげたアラジンは、パンっと手をうった。
「シンドバットおじさんの言う通りだよ、アリババくん!キミまで暗くなってちゃだめだ」
「……っ!そ、そうだよな。オレがへこんでたらユキだって心配する」
「そうですね、私たちが元気にしてあげましょう」
彼らの様子を見守る傍ら、ジャーファルも胸の内で決意を固めていた。
人に恐怖心を抱いていたあの子に、アリババが見ていたであろう彼の笑顔を、必ず取り戻してみせる、と。
過去に自分が助けてもらったように、今度は私が救ってみせる。
ぐっと拳に力を込めたジャーファルは、そっと立ち上がって部屋を出た。
ユキが起きたら、何か温かい飲み物でも飲ませてあげよう。それから甘いお菓子を一緒に食べるのもいい。
元気になったら謝肉宴に参加させてあげよう。
これからのことを考えると、自然と足取りが軽くなる。熱があることさえ忘れたように、身体に怠さもなくなっていた。