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「おい」

隣から怒りを帯びた声が聞こえる。初夏の爽やかな陽気には似つかわしくない。
そんな中、私はただもくもくと手の中のお弁当を片付ける。
どっかの阿呆が3切れしか入っていない卵焼きを2つも食ったからご飯とのバランスがやや可笑しくなってしまった。ほんとどこの阿呆だろうか。随分と頭の悪そうな顔色をしていた気がする。視覚的な意味で。あーあ、そうそうこの隣にいる青い髪の毛のガングロ兄ちゃんみたいなねー。声が無駄に本当に無駄に低くていい声してやがるのが腹立つわー。ほんとそっくりー。許さない。

「おい、シカトか?」

「怒りにエネルギーを消費するより教室へ行ってエネルギー摂取したらどうですか日サロクン」

「てめぇ…これは地だっつってんだろ」

殺すぞと怒り心頭のガングロを尚もスルーすればチッと聞こえる舌打ち。感じ悪いなおい。舌打ちよくないよ。将来ハゲるよ。嘘だけど。

「乳無し女」

「イケボの無駄使い」

「パーカー乳無し残念女」

「パーカー関係無いだろ多分年中半袖少年」

「冬は流石に長袖着るわ馬鹿か」

「ついでにセーターとブレザーも着とけ背ぇ高のっぽ」

「お前悪口下手くそかよ」

「別に悪意はないんで悪口じゃないですー」

別にダメージも受けないしね。乳なしとか。ははっむしろなくなってほしい。ほぼ一方的に罵倒されていれば、ガチャリと扉の開く音。

「わ、気持ちいいっスね」

「ごめんね、わざわざこんなとこまで」

男女の会話が聞こえてきて、心の中で舌打ちした。リア充さんがなんで屋上になんかきてるんすか。教室で乳繰り合いながら弁当でもつついてればいいのに。
そんなことを思いながらも、空になった弁当箱を片付け、足を伸ばしていちごみるくをズズーと啜りながらリア充鑑賞。よくまぁそんな二次元のような言葉が出てくること。恥ずかしくないの?ないんだろうな。男の方自分大好きそうだもんな。ツラァ。

「いいっスよ。で、話しって何スか?」

「えっ、あ、えっと…」

「ん?」

ん?とか……うわあ。ねぇわ。
思わず吹き出しそうになりながら、ほんとにこんなのやる人なんて居るんだなと感心する。いやあすごい腹立つなー。笑える。首傾げんなへし折るぞ。
この男の方、告白され慣れてる、気がする。興味ないから顔なんて見てないけど聞き方が、話し方が煽っているようにしか見えない。ていうか女の子は気付いてるか知らんけど、男の話し方、暗に「早く済ませて」感がやばいわ。お近づきになりたくないタイプだわ。

「何してんだ伏せろ」

「い…!」

いきなりがばりと頭を抑えられ横に少し倒れ込む形で強制的に伏せられる。いやお前が何してんだ蹴り落とすぞ。

抑えられた拍子にぶつけた顎も痛いし怪我をした頭も痛い。こいつ殺すまじ殺す。
洒落にならない痛みに少し涙目でぎっと横の不良を睨み付けるが当の本人は目の前の陳腐なやり取りを、まるで面白い玩具を見つけたような目で見ていた。
趣味わっる…





青春の1ページ
(うっわ、振ったぜあいつ)
((…果てしなくどうでもいい))

 

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