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キーンコーンカーンコーン

予鈴の鐘が鳴る。周りはばたばたと上履きに履き替えて急いで教室に向かって行くけど、まだ本鈴まで5分くらいある。
別に急がなくても大丈夫だと思うんだけど。
あ、慌てすぎて前の人がこけた。転びそうで転ばないある意味恥ずかしいパターンのやつだ。可哀想だから見ないフリをしてあげる。私やさしー。
ガチャ、と自分の下駄箱を開けて上履きを取り出そうとしたら見慣れない白い封筒。

「あか、つかさ…せいじゅうろう…?」

誰だ。
私の名前は秋瀬なんですけど。赤司ではないんですけど。しかも秋瀬と赤司なんて似ても似つかないと思うけど。
まぁ、うちの高校の下駄箱、クラス全部ごっちゃになってるもんな。学年のあいうえお順みたいな。間違えちゃったんだろう。なんてはた迷惑な。
お手紙は可愛らしいと称される丸文字で宛名が書いてあり、ハートのシールで封してある。え?なに?果たし状…みたいな雰囲気じゃないし。やっぱりこれはあれっすか。所謂ラブレターとかいう奴すっか。ひゅー凄いね。
ラブレターなんて別にそこらに放っておいてもいいんだけど、流石に良心が痛む。ほら、私って優しいから。
赤司、だから上か。片っ端から開けていこう。
万が一間違えてたら相手をかなりへこませる可能性があるので一応失礼しまーすと言いながらガチャと下駄箱を開ける。お、赤司、いきなりビンゴだ。上履きにちゃんと名前書いてある。偉いな。
…よし、これで無事に赤司君とやらの元に届くだろう。



この間のラブレター事件の時は結局ギリギリに教室に着いた。そうでした、海秀クラスは教室が遠いんでした迂闊だった。
だから今日私は学習して早い時間に登校しました。私偉い!
まだ昇降口に人は居なくて朝練してる運動部の声だけが遠くに聞こえる。ちと早く来すぎたか。でもこれだけ早いとなんだか清々しい。そんなキャラじゃないのは重々承知だけど。

誰もいない教室でHR始まるまで寝てようかななんて上機嫌で下駄箱を開けると…………またお前か。
普通ならあまり体験しないであろう下駄箱にお手紙。実はこの間のラブレター事件の後も数回同じことがあった。
しかも…
ぴらりと裏を見れば、やはり“赤司征十郎君へ”の文字。
また、お前か…
なんだよ誰だよ赤司征十郎。モテ期だな。あれか、相当格好良いとか。サッカー部のエースとか。テニス部の部長とかか。必殺技使っちゃったりするのか。はぁん青春謳歌してますねー。別に羨ましくなんてないリア充爆発しろ。

とにかくもう間違えないで欲しいわ。あんまり人の想いが詰まったものとか不用意に触りたくないし。というかラブレター先の相手くらいちゃんと確認しろよな。迷惑だろ私が。
この負の連鎖を回避するにはどうしたらいいんだろうと頭を捻って、ぴん!と閃いた。私頭いい。

鞄からルーズリーフとペンを取り出してキュキュッと今世紀一番綺麗な字で文字を書く。
そもそも名前がない下駄箱が悪いんだよね。うんうんわかるわかる。本来名前シールが張られるであろう場所にあうようにルーズリーフを千切ってセロハンテープで止めて。

完璧。

最後に今日のお手紙を赤司とやらの下駄箱に投函してミッション完了だ。ああ、清々しい。



下駄箱に恋文
(…ぶふっ、赤司なんだそれ)
(……青峰は、今日の練習倍かな)
(はぁ!?……や、はい)

 

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