この学校はとんでもなく広い。それに伴うかのようにここの図書室もとんでもなく広い。蔵書も豊富だ。それこそ絵本から分厚くてくそ難しそうな本まで様々。さすが全校生徒…えーっと何人だっけ、のマンモス校のことはある。
「天国殺人事件。て、て……」
高い本棚を見上げてたまに痛くなった首をさする、という行為を繰り返して数分。早くも挫けそうになってきた。
この間買ったハードカバーの本に挟まってた新刊案内に書かれていて面白そうだと思ったから読みたいと思ったんだけど…どうもないっぽいなー。やっぱ所詮は学校の図書室ってことで県立図書館に行くしかないか…
…はーい。今、私がアニメとか漫画しか読まないと思った人しょーじきに挙手してー怒らないからー。よし今手上げた奴ら殴る。手上げてなくても殴る。
どこぞの柄悪い従兄弟にも誤解されてるみたいだけども。私は漫画もアニメもラノベも好きだけど活字も大好きなんですよ。ミステリーに限り。SFとかも好きだけど、読んでるとさ、疲れてくるから。だからこう見えて図書室の常連なんですよ。まぁ、そんだけ図書室に入り浸ってるということは…ねえ?お察しのとおりクラスでは授業になるといつの間にかいる幽霊ですけど。
ないな。
まぁ、あんま高校生向けの内容じゃなかったぽいし。仕方ないかなー。あとで司書の沙織さんにリクエストしておくとして、今日は好きな作家さんの新刊でも借りておこうか。あれ、もうそれは読んだんだっけ。じゃあ何か適当に…
new!とポップな色合いのついたポップで彩られた新刊図書コーナーの本の目に付いたものを手に取り、あと1冊は何を貸りようかと軽く考えながら、最近有名になったミステリ作家の単行本をなんとなく手に取ってカウンターに向かう。
と、水色の髪の毛の男の子が本を抱えてカウンターの前に居た。
別にそれだけなら可笑しくないのだけど…司書の沙織さんはその子に気付かず作業をしているみたいだ。可笑しい。沙織さんは見ていないようでも図書室内のことには目を配っているから気がつかないなんてことはないはずなのに。まあ、そんなこともあるのかな。
「……沙織さーんおなしゃす」
「お願いします、でしょう?…今日はどれ?」
「これとこれ。の前にこの人先に並んでたからやってあげて」
「え?」
「…え、」
「え、、あれ?え?貸し出しですよね?」
「はい…」
「あらっ!やだごめんなさい気付かなくて」
「沙織さんしっかりしてよー」
「ごめんなさいねー」
「いえ、慣れてるので」
慣れてるので?え、なに?いじめられてんの?
首を傾げてその言葉の真意を探したがよくわからず、考えてる内に貸し出しの手続きが済んだらしい本を持った少年はありがとうございましたと行って去ってしまった。掴めない子だな…なんか二週目以降攻略できる、みたいなレア感あるし。また見てみたいわ。
なんてお気楽に考えていたらいつの間にか私の持っていた本のバーコードを翳しながら深刻そうな声で沙織さんが あの子、いつからいたのかしらなんて呟いた。え?なに?まだ夏じゃないのに怪談?
「いやいやいや、いくら沙織さんでも…」
「ほんとに気付かなかったのよ」
「ふーん……ま、そういうこともあるんじゃない?あのさ天国殺人事件って言う本読みたいんだけど」
「……あら、それさっきの子が借りていったわよ」
「え、」
司書さんと仲良し
(おしかったわねえ)
(ちっ)
(こら舌打ちしない)